統合によるシンプル化なるか?
開発者としては、自分たちが作ったアプリの機能や使い方をAppleが真似することに対して、あまり文句を言える環境ではない。iOSはAppleが支配しているプラットホームだからだ。それに、開発者が作ったアプリには、Appleが真似するまでに獲得してきたユーザーと、彼らが利用する過程で蓄積されたデータと経験がある。こうした点はAppleに対してアドバンテージを保っている。
開発者はアプリの販売や利用料の月額課金、ユーザー数獲得による広告と行った収益モデルを組み立てている。そのためAppleが同種の機能を搭載したら、最悪の場合はアプリの方向性を変えたり、違うアイディアを試さなければならなくなるだろう。しかし開発者とAppleは同じ土俵で勝負しているわけではない。
Appleはスマートフォンの活用方法の多様化と人気のある使い方を注意深く観察しながら、ユーザーがよりシンプルに(アプリを追加しなくても)やりたいことを実現したり、Androidなどの他のプラットホームより優位に立つための方法を探しているのだ。
開発者、Apple両者への共通の課題は、アプリの数や1つのアプリの機能が増えすぎることによるわかりにくさや使いにくさをいかに回避するかだ。
iOS標準のマップは、Googleマップのような公共交通機関の乗り換えやストリートビューなど慣れ親しんだ機能がなくなってしまったが、米国ではレストランやローカルビジネスの情報を提供するサービスYelpの情報を地図アプリの中から参照し、お店の料理の写真や評価を地図上で確認できる。
このように、より詳しい情報や機能はアプリに任せるとしても、その場で必要な情報を他のアプリやサービスから呼び出して確認できるようしたり、使い勝手に合わせて統合していく工夫が、本当に使いやすい環境を作り出していくことになるのではないだろうか。
開発者にとっては、これまでApple製のアプリも含めて、複数のアプリで実現してきたことをひとまとめにしてシンプルに利用できるようにするアプリは、チャンスがあるだろう。
松村太郎(まつむらたろう)
ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を追求している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura