本連載ではAppleが取り組むiPhoneやモバイルサービス、そしてこれから作りだされる未来の生活について、ジャーナリストの松村太郎氏が深読み、先読みしながら考えていく。第3回のテーマは「増え続けるiPhoneの標準アプリ、開発者にチャンスは?」について。
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筆者は2012年に上梓した書籍「スマートフォン新時代」(NTT出版)の中で、「スマートフォンはソフトウエアによって進化する」と指摘した。フィーチャーフォンはハードウェアによる進化、すなわちカメラやおサイフケータイといった新しいハードウェアが追加されることによって発展してきた。スマートフォンもハードの進化はあるが、その使い方や機能を決定づけるのはOSであり、世界中の開発者が制作するアプリが中心となった。
フィーチャーフォンの時代は、新しい機能やサービスを利用するには新機種への買い換えが必要だった。しかしスマートフォンでは、OSをアップデートすれば、最新のデバイスに早変わりする。2年前のiPhone 4Sであっても、iOS 7に載せ替えればほぼすべてのOSの新機能が利用でき、画面デザインも大きく変貌を遂げるのだ。
スマートフォンを様々な道具に変える「アプリ」
スマートフォンの機能や使い方を決定づけるのはOSではなくアプリだ。起動すると画面全体に表示され、1つの機能を果たすのがアプリだ。初代iPhoneには、「電話」「SMS」「メール」「カレンダー」「電卓」「カメラ」「写真」「株価」「天気」「メモ」「時計」「地図」「Safari」「iPod」「設定」の15種類のアプリが備わっていた。ホーム画面にはまだ5つの空きスペースが用意されていた。
第2世代となるiPhone 3Gが発売された2008年、アプリをダウンロードして追加できるApp Storeが開設され、アプリ流通の新たなエコシステムが構築された。開発者が、iPhoneに足りない機能や、iPhoneで実現したいことをアプリとして作り、世界中のiPhoneユーザーに使ってもらう。アプリの販売の仕方も画期的なものとなり、既にApp Storeには100万種類のアプリが登録されている。
開発者の優れたアイディアによってiPhoneの使い方が増えていく。アプリという小さなソフトウエアのパッケージを作り出したことによって、加速度的にiPhoneの使い方が拡がり、アプリのラインアップがスマートフォンそのものの魅力へと変化していった。なお、App Store開設以来現在も、Appleは有料無料に関わらずすべてのアプリをチェックしてApp Storeに掲載している。
App Storeには「カタログ」「エンターテインメント」「ゲーム」「仕事効率化」「ソーシャルネットワーキング」「旅行」「辞書」「エデュケーション」など23種類。最近では子ども向けアプリを揃えたカテゴリも新設されている。100万種類もあれば、ユーザーにどのように発見してもらうか、いかに使い続けてもらうか、開発者間で熾烈な戦いが繰り広げられている。