Windows Phoneを搭載したLumiaの売れ行きが好調といわれるNokiaのモバイル部門はMicrosoft傘下に入るが(注: 原稿執筆時点でまだ買収は未完了)、この好調の裏にあるのはLumia 520といった低価格端末の販売増や、Lumia 920等ハイエンド端末の積極的な安売り攻勢だ。つまり本当の意味でAndroidやiOSの市場には食い込めておらず、「数ある選択肢の1つ」の状況を脱していない。おそらくWindows Phoneが真価を発揮することになるのは次の施策を通過した2014年後半~2015年以降となるだろう。
Firefox OSはZTEから対応端末が発売され、主に東欧などヨーロッパ地域で出回っている。筆者も先日ポーランドを訪問したときに街の中心部に大規模な広告キャンペーンが展開されているのを確認しているが、まだまだ市場に受け入れられるには時間がかかるとみられる。端末は100ドル未満で安価ではあるが、LTE等への対応やプロセッサが数世代前のスペック、そして新しいプラットフォームという点でアプリを含む環境整備の問題など、特に先進国においての勢力拡大は厳しい状況だ。
Firefox OSは当初からミッドレンジ以下を狙っている様子がうかがえ、その意味ではまだ未開拓な先進国以外の市場をターゲットにするというのは理にかなっているのだが……。これに近い立ち位置なのがUbuntu Touchで、最初の製品のリリースは2014年とみられているものの、実際にミッドレンジでもどの市場やプライスターゲットを狙うのか、そのあたりが注目ポイントだ。
Tizenは、IntelとNokiaの共同プロジェクトだった「MeeGo」の系譜にあるもので、開発主体はSamsungだ。最初の製品が2014年2月23日にバルセロナのMWC開催前日に発表されるといわれており、本格的なデビューは4月以降くらいとなりそうだ。Tizenは現時点で開発者向けプロトタイプで動作する開発中ビルドのバージョンしか把握していないが、ユーザーインターフェイスを含む基本機構にSamsungの独自OSである「Bada」を統合しており、同社が中心となって世界展開を行っていくとみられる。Samsungのみでなく、AndroidやiOSへの集中を嫌う携帯キャリアがTizenに多数乗ってくるといわれており、Firefox OSやUbuntu Touchと比べて比較的大きなキャリアや先進国での取り扱いも期待される点が大きく異なる。
ただ問題となるのが、Samsungや携帯キャリアがTizenでどのあたりの価格ターゲットを狙ってくるのかという点だ。もともとBadaはスマートフォンOSといってもNokiaのSymbianを搭載したミッドレンジ以下の端末市場をターゲットにした製品が多く、動作パフォーマンスも"それなり"だ。現時点での完成度を見る限り、多少のアプリの充実をもってしても先進国市場で受け入れる余地はあまりないだろう。実際、AndroidやiOS向けに主要なアプリを提供している複数のベンダーに話を聞いたところ、Tizen向けのアプリ開発要請を断っている状況だという。もし仮に日本で発売される場合、登場した時点で未来が決定されないよう、万全の体制で臨むべきだろう。