このように、トップ2社を中心とした顧客獲得競争が一段落しつつあり、値上げへと傾くなか、中堅キャリアや小規模なプリペイド事業者らが安価な料金プランを提示してその隙間需要を埋めているというのが現在の米国の状況だ。競争が一段落して落ち着きつつあるともいえるが、このタイミングで同市場へと参入するのがソフトバンクだ。SprintとClearwireを実質的な傘下に収め、T-Mobileの買収さえ検討しているといわれる。本来であれば、この市場はあまりエキサイティングな状況ではないはずなのだが、そこにあえて飛び込むというのは何かしらの策があるのだと考えるのが普通だ。
1つは、あえて積極的な値下げ策や魅力的なプラン(無制限接続サービスなど)を提示して、AT&TやVerizon Wirelessから顧客の流出を狙うという手法だ。ソフトバンクがSprintを買収する際に「調達力の強化」を掲げていたが、コスト競争力を高め、いろいろ攻勢に出てくるのだと考えている。「最近、同社の孫正義社長があまり日本でのアピールに熱心ではなくなった」という意見も聞くが、かつてのNTTドコモとKDDIの寡占状態を大きく切り崩したソフトバンクの活動を振り返れば、同氏が米国市場にエキサイティングな非常に大きな何かを感じ取っているのかもしれない。
では、2014年以降の日本ではどんなことが起こるだろう? 冒頭でのスマートフォン普及率をみればわかるように、米国の状況が1年~1年半ほど遅れて日本に波及する可能性が高いとみている。2014年は「出てくる端末に新しさがみられなくなった」という意見が出てくると思うが、まだ引き続きスマートフォン普及率は限界まで伸び続けるのだと予測する。だが2014年末から2015年前半くらいを境に、米国と同様に「新規顧客獲得を望めなくなったときどうするのか?」という問題が改めてクローズアップされると筆者は考えている。
おそらくは、すでにキャリア各社も問題に気付いており、ドコモの「dマーケット」にみられるように付加サービス拡充に舵を切り始めている。物品やコンテンツのdマーケット経由での販売に加え、おサイフケータイの提供による決済手数料ビジネスでの収益増など、既存ユーザーに向けた施策を増やし続けているのがその現れだと予想できる。顧客増の望めない膠着化した状況で、携帯キャリアの将来的なライバルは同業他社というよりも、Amazon.comのような流通業者、Googleのようなプラットフォーマー、そしてPayPalや銀行といった決済ビジネス代行ということになっている…… と筆者の推測だ。
ソフトバンクが代理店になって国内販売を開始したFitbitが話題となったが、こうしたウェアラブル市場が盛り上がる理由も「スマートフォン飽和時代」とは無縁ではないと考える。
第3のモバイルOS競争のゆくえ
AndroidとiOSがモバイルOSのシェアの大部分を占める状況になって久しいが、一時期いわれた「第3のモバイルOS」は現在どうなっているのだろうか? 候補としては、Windows Phone、Firefox OS、Ubuntu Touch、Tizenといったものが挙げられているが、現状を見る限り2014年においてなお、どれかが突出するとはまだ考えにくい。