業務効率向上などを目的に、固定した個人のデスクを設けない"フリーアドレス"が部署単位で導入されるケースがある。釜田俊介さんが所属する電子カタログ事業部もそうなのかと思い訊ねてみたが、答えはNO。しかし釜田さんのデスクには、どう見てもフリーアドレスのオフィス以上にモノがない。
スマートデバイス向けのコンテンツ作りを行っている釜田さんは、デスクに置かれたMacBook Air、iPad、iPhoneで全ての業務をこなすという。どれも特別なアクセサリや外付けデバイスはなく、シンプルそのものだ。紙の書類はスキャンするか、必要な部分をメモに入力してデジタル化。「基本的に紙は置かないようにしている」という。
そんな釜田さんのデスクにあった唯一の紙媒体は、2冊のデザイン書籍だ。ひとつはドイツの航空会社・ルフトハンザのデザインワークを集めたもの。歴代ロゴからサイン計画・ブランディング・広告など、計算し尽くされたデザイン思想が分かる。もう一冊は『広告が好きでない人のための広告の本』。タイトル通り、一方通行のコミュニケーションではなく、相互関係を鑑みた広告の事例を集めたものだ。
コンセントが斜めのままロックされていないのは、移動時にすぐに取り外せるように |
2冊の本に、釜田さんが目指す仕事の方向が端的に現れている |
マリメッコのマグカップは四半期に一度買い替えて違う絵柄を楽しむ。歴代のカップは自宅にコレクション |
腕に付けていたクラシックなスタイルの腕時計は、もともとバウハウスの流れを汲む1950年代のデザイン。「Appleの(MacBookやiPhoneのデザイナー)ジョナサン・アイブも戦前・戦後頃のドイツのデザインに影響を受けています。最近のトレンドである"フラットデザイン"も、元を辿るとこれらに行き着きます」と語る釜田さん。それらを指して「純粋なデザイン」と表現する言葉から、媒体や手法を超えてストイックに本質を追求する姿勢が感じられる。