『イヴの時間』などでおなじみの吉浦康裕監督が放つ待望の新作『サカサマのパテマ』。『イヴの時間 劇場版』より3年の月日を経て、2013年11月9日(土)、ついに劇場公開を迎える。
吉浦監督が、原作・脚本・監督を務める本作は、"サカサマ・トリップ・スペクタクル"と銘打たれているとおり、"サカサマ"をテーマにした冒険活劇。ボーイ・ミーツ・ガールの王道的な要素を踏まえつつ、吉浦監督ならではの奇想天外な展開が、これまでに体験したことのないようなドキドキ感を演出する。
キャラクター原案を『イヴの時間』の茶山隆介氏が担当したほか、アニメーションキャラクターデザイン・作画監督には『コードギアス 反逆のルルーシュR2』の又賀大介氏、美術監督には『魔法少女まどか☆マギカ』の金子雄司氏を起用。コスチュームデザインに『THE IDOLM@STER』関連のイラストでおなじみの杏仁豆腐氏、音楽に『鋼の錬金術師』の大島ミチル氏を迎えるなど、『イヴの時間 劇場版』よりもさらにパワーアップしたスタッフ陣が集結。キャスト陣は、ヒロインのパテマ役を藤井ゆきよ、エイジ役を岡本信彦が担当する。
そこで今回、吉浦監督による待望の最新作『サカサマのパテマ』が2013年11月9日に公開されるのを前に、監督自らが語った作品の魅力、見どころなどを紹介しよう。
吉浦康裕監督が語る『サカサマのパテマ』
――『イヴの時間 劇場版』の後、『サカサマのパテマ』に着手したのはいつ頃ですか?
吉浦康裕監督「『イヴの時間 劇場版』の公開が終わって、およそ3カ月後には企画書を提出してます。『イヴの時間』はけっこうロングランだったので、最後のほうはもう次のことを考える余裕があったのと、幸いなことに『イヴの時間』はたくさんの方に観ていただけたので、今のタイミングなら長年の夢だった劇場長編アニメの企画も通るんじゃないかと思って。周りからも散々言われたんですよ、とにかく忘れられる前に企画を通しておけと(笑)」
――まさに機を逃さずというところですね
吉浦監督「アイデアはいくつかあったのですが、劇場向けでわかりやすい、キャッチーなコンセプトのものがいいと思って提出したのが『サカサマ人間』の企画だったんです。"サカサマ人間"というコンセプトは昔からずっと自分の中にあったのですが、逆にそれだけしかなくて、それ以上のアイデアはまったくなかった。ただ、『イヴの時間』までずっと室内劇をやっていたので、いい加減に飽きたというのもあり、今度の作品は外に出るものにしたいなと。なので、"サカサマ人間"が外に出る、というアイデアでまず企画書を作りました」
――"サカサマ人間"という構想は昔からあったのですか?
吉浦監督「子供のころ、天気のいい日に空を見上げるじゃないですか。そのとき、見上げているんですけど、自分の眼下に広がる雲海に落っこちそうになるという感覚があったんですよ。これは共感してくれる人と、うん? って首をかしげる人が半々くらいなんですけど、なぜか自分にはそういう感覚があった。"空が落ちてくる"って比喩がありますけど、自分の中では、空に自分が落ちていくという感覚だったんです。だから、周りもみんな同じ感覚だと思っていたんですけどね(笑)」
――子供のころの感覚が今回のアイデアに繋がっていったわけですね
吉浦監督「その経験をアイデアとしてずっと温めていたわけですが、最初はいわゆる古典SFにありがちな、全人類がある日突然サカサマ化してしまうという話だったんですよ。それで、ほとんどの人類が空に落っこちてしまうんだけど、たまたまビルの中にいた人が難を逃れる。その人たちが、そのサカサマの地球でどのように生きていくのか……そんな壮大なお話を考えていたんですけど、それだとちょっとお金がかかりすぎる」
――ハリウッドの大作映画っぽい感じですね
吉浦監督「そうそう。これだとハリウッドで1億ドル以上掛けるような映画になっちゃう。それに、そういう展開だと、どうしても社会や世界がテーマになってしまうじゃないですか。なので、いろいろ難しいなって悩んでいるときに、ふと思いついたのが、ヒロイン一人だけをサカサマにするというストーリー。それを思いついてからは、本当にあれよあれよという間にストーリーが出来上がっていきました」