紙の本と電子書籍の同時発売は無意味か?

一方で、電子書籍と紙の本を同時に発売することと、Kindleストアで"予約"させることにに対しては次の2点から懐疑的に見る意見もある。

  • 電子書籍と紙を同時発売することで、紙の本の売上が落ちるのではないか。

  • いつでも購入できる電子書籍をユーザーに"予約"させても無意味なのではないか。

この2点に関して友田氏は、コミック「グラゼニ」の事例を紹介して回答している。

「グラゼニ」は8巻が2012年11月22日に紙の本として発売され、それから43日遅れの2013年1月4日に電子書籍版が発売となった。

このときの紙の本の売上を「1」とした場合、電子書籍版の売上は「0.2」だったという。

その後、9巻は紙の本と電子書籍版が同時発売となったが、それでも紙の本の売上はまったく減少せず、むしろ前回比で「1.1」と微増。一方で電子書籍版の売上は「0.4」と、前回比で約2倍に増加し、トータルでの売上も増える結果となった。

その後、10巻は諸事情で電子書籍版の発売が紙の本に比べて8日遅れとなったため、予約受付を行った。その結果、紙の本の売上は変わらず「1」だったが、電子書籍版は予約で「0.4」、発売時に追加で「0.2」を売り上げ、結果的に「0.6」とこれまででもっとも売れる結果が出た。

このことから友田氏は、「同時発売しても紙の本の売上に影響はない。電子書籍版の売上は同時発売することで大幅に増加する」と分析。電子書籍版の予約に関しても、「機械損失を防止することが可能。同時発売していたら得られたはずの売上機会を失わなくてすむ」とする。