――あらためて作品を見直してみて感じたことはありますか?

「ずいぶん計算された作品だと思いました。最初、善と愛の2人の兄妹愛を中心にストーリーが展開して、人類を恐竜から守るんだという使命感で動いていたのが、シリーズの途中から、自分たちの力では手に負えない敵が現れる。そして愛が瀕死の重体になったと思ったら、合体してアイゼンボーという巨大ヒーローが登場。すると今度は恐竜のほうも負けじとゴッテスというのが登場してきて、恐竜が怪獣に進化して対決していく……。僕は最初、こんな風に展開するとは思ってもいなかったので、あらためて全編を観て、すごく計算された展開だったんだなあと素直に思いました。もしかしたら苦肉の策だったのかもしれませんけど(笑)」

麻上「どうでしょうね(笑)」

「ただ、最後の最後で、どうして僕と愛の2人が宇宙に旅立って行ったのか……それだけは未だにわからないです」

麻上「地球でそのまま生きていけばいいのにね(笑)。私は今回のDVDを観るとき、途中から倍速にしたんですよ。すると、倍速のほうが今のアニメのテンポなんですよね。それを元の速度に戻すと、ゆったりとした情のようなものが感じられて……。こんな感じに戻ればいいのになって思いました。声優さんたちの芝居も、それぞれが全然違うトーンで、違うテンポ。上さんが演じる善も、いかにもヒーローという感じではなく、何かちょっと違っているのがすごく良いですし、滝口さんの台本では文字にならないようなセリフとか、兼本(新吾)さんにしても高橋(和枝)さんにしても、みんながそれぞれに味のある声で、芝居をみせてくれる。それがすごく懐かしくもあり、それが懐かしくていいのかなっていう思いもあり……そんな感じでした」

――それぞれに特徴があり、キャラクターが立っていますよね

麻上「すごくわかりやすいし、立体感があって、耳にうるさくない。観ていて、すごく癒しというか優しさを感じました」

――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします

「36年も前の作品なので、懐かしんで観ていただくのももちろんありですが、新鮮な気持ちで観ていただいても面白いと思います。実写との合成アニメというものがもっともっと進化していっても良かったのではないかと思えるぐらい良くできた作品だと、僕は思っています。ストーリーも、特撮の実写パートも、すばらしい出来栄えになっておりますので、最初から最後まで、たっぷりと味わっていただければうれしいです」

麻上「『アイゼンボーグ』が世界中で観られていると聞いて、すごくうれしく思っています。私の愛だけではなく、それぞれの国の役者さんが演じる愛も善もいるんですけど、きっと私の愛も聴いてくださると思うし、そういう形で私たちの声が世界中の人に届いて、『アイゼンボーグ』という作品を楽しんでくださっていると思うと、本当にこの作品に関われてよかった、本当にいい仕事だなっていう気がします。特撮シーンもすごくワクワクしましたし、アニメとの合体という手法もすごく面白いです。そして、こんなに情のあるドラマを描いてくださっていたんだということも、36年経って、あらためて私も感じることができました(笑)。なので、皆さんにも同じように楽しんでいただけたら、本当にうれしいと思っています。よろしくお願いします」

――ありがとうございました


なお、6月より毎月リリースされている『恐竜大戦争アイゼンボーグ』のDVDだが、9月13日発売予定の最終巻となるVOL.8には特典DVD〈SPECIAL DISC〉が付属。特典DVDには、主人公・善役の上 恭ノ介と愛役の麻上洋子による、放送以来35年ぶりの再会となった対談や、メカニックデザイン・野口竜氏によるロングインタビューが収録されるので、こちらも注目しておきたい。

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