以前のフィーチャーフォンであれば端末価格も100~400ドル程度で、1台あたりの販売奨励金は現状の半分以下で済んでいたとみられる。だがスマートフォン時代になり端末価格が大幅上昇したことで負担が増え、いくらデータ通信利用が増えてARPUが上昇したとはいえ、増え続ける負担は無視できるレベルではないだろう。
この結果、米国では2つの現象が起きている。1つは体力のない地域/中小系キャリアの経営が厳しくなり、大手企業に買収されて業界再編が進んだという点だ。iGRの報告によれば、RGO (Regional and Small Operators)と呼ばれるこの種のキャリアの市場規模が2012年の2220万から今年半ばの1250万まで一気に半減したという。前述のAT&TによるLeap Wireless買収もそうだが、体力のないキャリアが次々脱落していくという大手収れん現象を生み出している。
もう1つ興味深い現象が、販売奨励金上乗せに頼らないビジネス手法だ。AT&Tは先日、「Aio Wireless」という年契約しばりなしのプリペイドサービスブランドを立ち上げたが、また2年契約縛りの条件を緩和し、ユーザーが販売奨励金の差額分を払えば年契約を途中解除してユーザーがより短いサイクルで端末購入が可能になる施策を発表している。
これはT-Mobileが今年4月にiPhone取り扱い開始とともに発表した施策に追随したもので、契約縛りを行わず、続きの料金支払いだけでサービス利用を継続できるポストペイドながらプリペイド的なサービス形態となっている。このメリットはユーザーの場合、例えばiPhone 5を1年利用したユーザーが次期iPhone新製品が販売されたタイミングで乗り換えることが容易になる。キャリアにとってのメリットは、端末購入更新のほか、場合によっては販売奨励金負担を軽減できることにある。