植田正治写真美術館館長・森道彦さんに聞く
―― フォトスクールを開催したきっかけを教えてください。
森氏「フォトスクールは3年前から始めました。地域の人々にもっと来館してもらい、私たちの解説と一緒に植田の作品を見てもらうことで、美術館との距離を縮めたいと考えたからです。今はデジタルカメラの普及とともに写真人口も増えていますから、ちょっとした撮影のコツも伝えていけば、みなさんのフォトライフもより充実したものになるのではないかと」
―― 確かに、植田作品と実撮影のコツを関連づけて解説されていたのが新鮮でした。
森氏「そこまで大げさなものではなくても、みなさんにとって『コツ』になればということですね。ちなみに、植田正治が鳥取砂丘を一つのスタジオとして選んだのもそうなんですよね。背景がシンプルで無駄なものがないほうが、自分の見せたいものが伝わりやすいと考えたそうですよ」
―― 植田さんといえば、ハッセルブラッドやローライなどのスクエアカメラのユーザーとして有名ですが、今回カシオさんのカメラを採用された理由は?
森氏「今回の生誕100周年のフォトコンテストでもご協力いただいたのが直接のきっかけです。カシオさんのカメラは機能が幅広くて、とても使いやすいですよね。アートモードや連写などは初心者には興味深い機能だと思いますよ。
それに、オートフォーカスが遅いカメラが多い中、カシオさんのEXILIMはまったく逆で、例えばジャンプ写真などのように、むしろ瞬間を切り取ることが得意なカメラという印象があります。スクールに来ていただく方には『カメラで撮るのって面白い』と楽しんでもらうところから始まりますので、その意味でもカメラのレスポンスの速さは強みだなと思っています」
―― では、フォトスクールのカリキュラムで工夫したところはありますか?
森氏「小学生の場合は、芸術写真を目指すことで楽しさを感じてもらおうと。ですから、先生たちにはどんなに些細なことでも、意識してほめてもらうようお願いしています。写真文化が広がって写真人口が増えていくための種まきをしている状況なんですね。
通常の流れとしては、作品観賞、芸術写真の説明、カメラの使い方、撮影、講評会とほぼ一定です。参加者の年代に併せて、説明する内容や目標、使うカメラを変えますが、小学生は基本的に、気軽に撮影できるコンパクトカメラにしています」
―― デジタルカメラと写真の関係を考えた時に、写真文化はどうなっていけばいいとお考えですか?
森氏「デジタルカメラは日常生活に浸透して裾野が拡大していますよね。ほとんど誰でも使えるものになっていますが、ちょっとしたコツを知っていれば、人とはまた違った写真を撮ることができるようになります。そういう面白さも伝えていければと思います」
―― ありがとうございました。