――今回の作品では、ストーリーのほか、キャラクターデザインも石ノ森先生のオリジナルとは大きく変わっています
神山監督「おそらく往年のファンの方からすると違和感を感じられた部分かもしれませんが、今回キャラクターデザインをいじったのには、2つの大きな理由があります。まずひとつは、現代を舞台に『009』を描こうとした場合、今の世界情勢をストーリーに織り込んでいくのに、マンガ絵のままだと受け止めきれないのではないかと思ったからです。語弊があるかもしれませんが、強いて言うなら今回は実写で作るイメージで『009』を作りたいという想いもあったので、原作よりもリアルなキャラクターデザインになっています」
――実写を意識したデザインというわけですね
神山監督「あともうひとつの理由は、3Dでアニメーションを作るときの物理的制約というのもあります。石ノ森先生の絵をそのままに3Dのモデリングを作ること自体はもちろん可能です。ただ世界観、彼らが乗る車だったり、彼らが座る椅子、生活する空間、そういったものすべてを石ノ森先生の描いた頭身のままで統一感を持たせようとすると、椅子ひとつ、ドアノブひとつとっても、すべてデフォルメし、新手に作り出さなければならない。つまり、作品に登場するありとあらゆるものを先生の描いた世界観で統一するのは、スケジュール的にも、スタッフのマンパワー的にも、とても難しい。しかし、キャラクターをリアルな頭身にすれば、他の物体はすべて現実にあるものと同じスケールにできるので、デザインを起こさず実寸で作っていけばいいわけですよ。そういった物理的な制約も、デザインを変更した大きな理由になっています」
――5月22日にはBlu-ray/DVDがリリースされますが、Blu-rayD/DVDで観るにあたって注目してほしいポイントはありますか?
神山監督「あえて今回は現代の世界情勢をストーリーの下敷きにしている部分があるので、ともすると、宗教や政治的イデオロギーに関しては、あまり良い気持ちがしない人もいるかもしれない。それもあってポリティックな設定などは意図的にボカしている部分もあります。そこはエンタテインメントとは関係ない情報だとしても、予備知識として知っていたらより面白くなるだろうという部分。そういったところを意図的にボカし、ストーリーのスピード感を優先して演出しているところがあります。今回のパッケージではそういった設定に関してのサブテキストもたくさん用意してありますので、そのあたりにどういう意味合いがあったのかということを反芻しながら、あらためて本作で描こうとしたテーマなどを読み解いていただくと面白いのではないかと思います。あと、これは視聴環境がある方限定になりますが、3Dでの視差を含めて、まったく新しい表現方法に力をいれた作品にもなっていますので、それをあらためて感じていただくのもBlu-rayならではの楽しみ方だと思います」
――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします
神山監督「昨年劇場で公開された『009 RE:CYBORG』があらためてBlu-rayとDVDになって発売されることになりました。非常に多くの反響をいただいた作品ですが、今回のパッケージは、多くの特典がついた充実したものになっておりますので、映画館とはまた違った楽しみ方ができると思います。そのあたりも期待してご覧になっていただけたらうれしいです。よろしくお願いします」
――ありがとうございました
『009 RE:CYBORG』のBlu-ray/DVDは2013年5月22日の発売。3D立体視バージョン、2D版の本編に加え、120分を超える映像特典を収録した3枚組の豪華仕様で、描き下ろしコミックやメイキングブックなどが同梱された「豪華版Blu-ray BOX」、2D本編に通常版ブックレットが同梱された「通常版Blu-ray」、そして「通常版DVD」の3ラインナップで、価格は「豪華版Blu-ray BOX」が10,290円、「通常版Blu-ray」が6,090円、「通常版DVD」が5,040円となる。
(C)2012 「009 RE:CYBORG」製作委員会