様々な想いが交錯した「アイディア発想部門」の発表スタート!
バイヤーとして参加する企業の代表者が多数詰め掛けたなか、まず行われたのが「アイディア発想部門」の最終プレゼンだ。トップバッターを飾ったのは、現役早稲田大学の学生、石塚健朗さん。彼がプレゼンを行ったアイディアは、「もしタメ」というもの。勘の良い読者なら、既にピン!とこられたかもしれないが、このアイディアは"もしも親と同じ歳だったら"というキーワードから、親子間の不仲、特に思春期の子供とのコミュニケーションを円滑にするというもの。ソーシャルメディアに蓄積された親の書き込みやつぶやきが、子が同じ年齢になり親が実際にアクションを起こした時に配信される、と実際に使用されるシーンまでかなりの年月を経なければならない。課題はあるものの、絶妙なプレゼンで会場を沸かせていた。
二番手は「素敵なコミュニケーション、演出します」とのコンセプトのもと発案された「Casming」を発表する菊池里紗さん。菊池さんのアイディアは、初対面の人とのコミュニケーションでも、共通の話題を見つけて円滑に行うことができるようサポートするというもの。事前に設定しておいたプロフィールを"Work""School""Me""Dream"の4つの公開区分に分け、相手に応じて使い分け共通点を見出し会話のきっかけを探せるという。また、一押しの機能として、前述したプロフィール情報から共通の話題で楽しめそうな人を探し出せるという機能。従来であれば人を切り口に情報を手繰るわけだから、発想は新しい。将来的には、一対一、一対多数、多数対多数で使えるのではないかと夢を膨らませていた。
三番手に登場した吉田圭汰さん、なんと学ランを着用しているではありませんか!在籍する高等学校の卒業式を明日に控え「俺は卒業写真で右上になる」と笑いを誘いながら、口火を開いた。吉田さんの「ジャパニコーゼ」というアイディアは、諸外国からの観光客を増やし、日本の高齢者の生活に新たな価値を創造するというもの。
具体的には、"旅行に纏わるサポートアプリ"なのだが、注目すべきはガイドとして高齢者を活用し、新たな雇用を生み出すという着想。日本の観光ビジネス、高齢者の雇用創出まで含めて考えられた、まさに「人が"豊か"になる国民的アプリ」というコンセプトに沿ったものだった。
四番手に登壇したのは、チーム東原宿の川久保莉里さん。「和」と題されたアイディアは、人の動きや行動を参考に新たな行動を模索したいと考えている人を対象にしたアプリ。手描きで描かれたモックアップをベースに、使い方のイメージを伝える川久保さん。「和」というアプリでどのようなことが可能なのか、ユーザーにどんなメリットがあるのかを語ってくれた。しかも、収益構造まで考えられており、ユーザーへの行動提案の際に広告を活用する、地域の活性化に繋げるなどのポイントに対しては、もっと掘り下げて煮詰めていけば面白いアイディアでは、と審査員からも評価されていた。
五番手は、ネタバレ化した日常に一石を投じる「ba-show」というアイディアを披露してくれた和泉眞人さん。「"知らない"に出会うアプリ」をコンセプトに、現在地以外がMicrosoftのロゴによって覆い隠された散歩サポートアプリで、自らの行動によって地図を切り拓いていく楽しさ、情報過多な現在に対するアンチテーゼを含んだもので、写真を地図に貼り付ける、ソーシャルな機能を活用するなどゲーム的要素が盛り込まれたものだった。若干、"つかみ"に時間を割きすぎて終盤駆け足になったが、「場所」と「芭蕉」を掛けた「ba-show」というネーミングに、審査員から高い評価を得ていた。
六番手は、千葉大学に在学中の武井茉莉花さんによる「震災復興アプリ」。東日本大震災で被災した長洞元気村への観光客を誘致・コンシェルジュ機能を有したガイドアプリを基本としたほか、震災復興の支援として20,000円という目を惹く高額なプライスが特徴だ。武井さん自身も、震災後ボランティア活動に勤しみ、そのなかで生まれたアイディアだという。
3.11の風化を食い止め、震災を語り継ぐために武井さんが"何かアクションを起こさねば"と思い参考にしたのが、長洞元気村で取り組まれている被災地復興のモデルケース「長洞元気村好年齢ビジネス」に着目。長洞元気村で行われている活動をITで支援しようというものだ。
七番手に登場したのは、プレゼン開始時に審査員やバイヤーをグッと引き込む演出を行った白井俊彦さん。白井さんのアイディアは、自動音声認識システムによるリアルタイム文字表記アプリ「Voice Reading~声を読む~」というもので、聴覚障碍者の支援、そしてコミュニケーションをサポートするというもの。音声認識技術を応用して、話し手の言葉をリアルタイムで文字化し、聴覚障碍者はその内容を理解できたか"✓"もしくは"?"で意思表示することが可能。プレゼンでは実際に聴覚障碍を持った人の実体験を紹介し、このアイディアによって社会全体の向上、情報保障の整備、聴覚障碍者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を図るという。ニコ生でも「素晴らしい!」という声が多く聞かれたアイディアだった。
以上、7アイディアが披露されたあと、審査員を代表して西村氏から総評が述べられた。「明日卒業式を迎える高校生から29歳までの皆さんによる堂々としたプレゼンで、今後に非常に期待したい。日本全体が揺れるようなイノベーティブな企画・アイディアが出てくればよかった」と評し、さらに今後続くであろう第二回、第三回の「Digital Youth Award」に期待したいと締め括ってくれた。