第7章 Windows 8の機能とソフトウェア - 再インストール作業を軽減する「PCのリフレッシュ」
本章では他章から漏れたWindows 8の機能や、非Windowsストアアプリの機能を取り上げていく。まずは新たに備わった「PCのリフレッシュ」という機能。Windows 8に何らかのトラブルが発生し、OSを再インストールする必要に迫られる場合、コンピューターに保存した個人ファイルなどのデータを保持したままシステムファイルの初期化や各設定をリセットするものだ。
その一方で「PCの初期状態に戻す」は個人ファイルなどのデータも破棄し、Windows 8をインストール直後の初期状態に戻すというもの。つまり、Windows 7以前で行っていた"OSの再インストール"という作業を不要にするものだ。後者の内容は簡単に想定できるが、気になるのは個人ファイルなどのデータを保持する前者の機能。どの程度のデータを保持し、何が破棄されるのかという点ではないだろうか。そこで「PCのリフレッシュ」の動作を検証しながら、その結果をご報告する(図469)。
同機能を実行すると最初に警告メッセージが現れる。記載されたとおりユーザーが作成したドキュメントファイルや個人設定、Microsoftアカウントに関連付けられているWindowsストアアプリは維持されるが、コンピューターの設定やデスクトップアプリケーションは破棄。説明に「削除されたアプリの一覧はデスクトップに保存される」とあるが、あくまでも一覧でありデスクトップアプリケーション本体ではない(図470)。
後は画面の指示に従って進めると、コンピューターの再起動後に「PCのリフレッシュ」が行われる。この際システムファイルを初期状態のものに置き換えるため、Windows 8のセットアップに用いたUSBメモリやDVD-Rを求められるケースが多い。オンラインショップ経由でWindows 8にアップグレードした場合は、事前にインストールメディアを作成しておこう。なお、本操作の所要時間はコンピュータースペックによって異なるが、仮想マシン上では20分程度かかったことを記載しておく(図471~474)。
「PCのリフレッシュ」を終えると、Windows 8のインストール時に描かれたアニメーションが再生される。煩雑な印象を覚えるもののバックグラウンドで行う処理を隠すためにアニメーションが描かれることを踏まえると致し方ないだろう。この処理で10分ほど待たされたが、一瞬デスクトップが現れてからスタート画面に切り替わり、Windowsストアアプリのインストールやネットワーク設定を求められる。なお、画面が黒いのは使用していたMicrosoftアカウントに関連付けられた個人設定が反映されたためだ(図475)。
デスクトップに生成された「削除されたアプリケーション.html」ファイルを開くと、筆者が手動でインストールしたソフトウェアやWindows Update経由で導入したMicrosoft IME辞書の更新データが削除されていた。このように「PCのリフレッシュ」は確かに有用だが、ファイルの関連付けやディスプレイ設定なども保持されないので、注意が必要だ(図476~477)。
一方の「PCの初期状態に戻す」は文字どおり出荷状態に戻すものであり、個人ファイルなどのデータを含めたすべてを初期化するものである。途中で選択を求められるドライブの完全クリーンアップを踏まえれば、OSの再インストールというコンピューター初心者にはハードルの高い操作を自動化したものと捉えるとわかりやすいだろう(図478)。
操作内容は「PCのリフレッシュ」と大差なく、Windows RE(Recovery Environment)モードでWindows 8の再インストールが行われる。再起動後はライセンス条項の確認から始まるが、第2章のインストール手順と重複するためここでは割愛することにした(図479~481)。
いずれの機能も予想できないトラブルが発生した場合は有用な機能となるが、それなら通常のフルバックアップと復元操作を行った方が簡単ではないだろうか。Microsoftの基礎技術チームに所属するプログラムマネージャーのDesmond Lee(デズモンド・リー)氏は「どのWindows 8マシンでも一貫したエクスペリエンスを実現する」ためと述べている。
なお、これらの操作はコンピューターが起動しなくなった場合に備え、「回復ドライブ」を作成しておいた方がいいだろう。同機能はWindows 7における「システム修復ディスク」のようなものだが、作成対象となるメディアがCD/DVD-Rではなく、USBメモリに変更されている。光学ドライブを備えていないノート型コンピューターやメディアの消費を踏まえると、USBメモリの方が使いやすいだろう。
作成ウィザードが用意されているので、画面の指示に従って作成すればよい。使用できるUSBメモリは256メガバイト以上。USBメモリに書き込まれるのは、起動やメンテナンスに必要なファイルに限られるため、作成作業は数分で完了する(図482~487)。
回復ディスクからコンピューターを起動する際は、最初にキーボードレイアウトの選択をうながされるので、日本語キーボード使用時は「Microsoft IME」、英語キーボード使用時は「US」を選択すればよい。後は「トラブルシューティング」を開けば、「PCのリフレッシュ」「PCを初期状態に戻す」が選択できる。以下の流れはWindows 8上から実行した際と同じため割愛するが、これらの機能を用いて何らかの理由で不安定になったWindows 8環境を復活させてほしい(図488~490)。