第6章 Windows 8のネットワークとセキュリティ - 機能の向上が見られない「ホームグループ」
今度はエンドユーザーの話に戻ろう。Windows 7から組み込まれた「ホームグループ」は、Windows NT時代から続く共有フォルダーの仕組みが難しく理解できないユーザーのために用意された機能である。Windows 8にも同機能は引き継がれているものの、基本的に機能差はない。
以前と同じくネットワークプレースが「プライベートネットワーク」(以前の「ホームネットワーク」「社内ネットワーク」を一緒にしたもの)であり、使用できるのもドキュメントフォルダーなどの個人フォルダーやプリンターに代表される一部のデバイスと同じ。同じネットワーク(LAN)上にあるホームグループを検知できない場合、トラブルシューティングに頼らなければならないも一緒だ(図396~397)。
ホームグループを使用する際には、自動的に「HomeGroupUser」グループを有効にし、ホームグループに参加するユーザーは同グループに加わる仕組みだ。つまり、従来のUNC(Universal Naming Convention:Microsoftネットワークにおけるネットワークリソースを参照する表記法)を使って参照するか、ホームグループを使用してアクセスする内容は同じであり、コンピューターのロジックやネットワークの仕組みを把握しているユーザーなら前者の方が簡単なことに変わりはない。
本来ホームグループは、多くのエンドユーザーがネットワークリソースを有効活用できるようにするため、MicrosoftはWindows Feedback Panelなどを用いてさまざまな調査を行ってきた。その結果として、どのような場所からでもネットワークに参加し、他のコンピューターに保存されたコンテンツを手軽に活用できる「Windows 7 Consumer Experience」コンセプトにたどり着いている。その結果生まれたのがWindows 7であり、ホームグループという機能だ。
前述のとおりコンピューター中上級者は、UNCを使用すれば簡単にアクセスできるが、それらの知識を持たずともスムーズにアクセスできることが評価されるのは、現在のコンピューター事情が示すとおり明らかである。その点を鑑みればホームグループは、より洗練されたUXを用意すべきだったのだろう。ホームグループに限らずWindows 8は、メッセージ周りのミスやWindows 7の機能をそのまま踏襲し、新しいスタート画面と相まって使いづらくなっている部分があるのは否めない。
繰り返しになるが、ホームグループ機能は便利な機能ながらも、Windows 7の時点で不便に感じた部分のほとんどが改善されていなかった。コンピューター上で表示している写真や動画を、対応するディスプレイ上でストリーミング再生する「Play to」という機能が強化されているが、デバイスの検出はホームグループ経由で行われるという(図398)。
Windows 8でも、ホームグループを実現するサービスとして「HomeGroup Listener」や「HomeGroup Provider」が稼働している。Windows 7とまったく同じであればこれらのサービスを抑制するなどのカスタマイズテクニックが通用すると思われるが、これらの結果は筆者が本Webサイトに寄稿する記事で検証していきたい。いずれにせよ、Windows 7でホームグループを活用されてきたユーザーは、Windows 8でもそのまま使用可能。ネットワークに関する知識をお持ちの場合、使用スタイルを変更する必要は現時点でなさそうだ。