キヤノン「EOS Kiss X6i」は、「EOS Kiss」シリーズの10代目となるエントリー向けデジタル一眼レフ機だ。昨年リリースされた「EOS Kiss X5」からデザインを継承しつつ、ライブビューAFの高速化や液晶モニタのタッチパネル化を実現した。その機能と操作性はどうなのか。試作機によるレビューをお伝えしよう。

キヤノン「EOS Kiss X6i」

キヤノンは昨年3月、「EOS Kiss」シリーズで初めてバリアングル液晶を搭載したモデル「EOS Kiss X5」を発売した。シーンインテリジェントオートや表現セレクトといった新機能を搭載し、トータルバランスに優れた製品に仕上がっていた。現在に至るまで、売れ筋ランキングの上位をキープし続けていることも納得できる。

ただし、EOS Kiss X5の弱点の1つは、ライブビューや動画撮影の際のコントラスト検出AF(ライブモード)が遅いこと。EOS Kiss X5に限らず、そもそも多くの一眼レフ機は位相差検出方式のAFを採用し、レンズについても同方式に適した設計になっている。そのため、コントラスト検出AFでは合焦までに時間がかかり、動きのある被写体を捉えるのは非常に困難だ。EOS Kiss X5のコントラスト検出AFもご多分に漏れず、動きの少ない被写体でないと撮影が難しかった。

そこで、今回新登場した「EOS Kiss X6i」では、ライブビューおよび動画撮影用に「ハイブリッドCMOS AF」と呼ばれる新しい仕組みを採用した。これは、CMOSセンサーの撮像面に埋め込んだ位相差検出AF用の画素を利用するものだ。まず、この位相差検出AF用の画素でおおよそのピント合わせを行い、その後でコントラスト検出AFによって厳密なピントを確定するため、合焦の時間を短縮できる。

バリアングル式の液晶モニタを搭載。ライブビューおよび動画撮影でのAFがスムーズになり、利便性が大きく向上した

AFモードに「ライブ多点AF」を選んだ場合は、カメラが判断した複数のAFフレームを利用してピント合わせが行われる

その上で、「ハイブリッドCMOS AF」を生かす新レンズとして、ステッピングモーターによってAF駆動を行う「EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS STM」と「EF 40mm F2.8 STM」の2本を新発売した。このSTM仕様の新レンズをEOS Kiss X6iに装着した場合には、ライブビューや動画撮影のAFはほとんど無音でスピーディに作動する。合焦にかかる時間は大幅に短縮され、操作感はスムーズだ。今のところ「ハイブリッドCMOS AF」の性能をフル発揮できるレンズは2本のみとはいえ、従来モデルの弱点をきっちりと改善している。

AFモードには、画面内の好きな1点でピントを合わせる「ライブ1点AF」のほか、最大31点の広いエリアで合わせる「ライブ多点AF」、顔などの被写体に自動追尾する「顔+追尾優先AF」、ファインダー撮影時と同じ9点による位相差検出AFのみが作動する「クイックAF」の4種類が用意される。さらに、被写体に常にピントを合わせ続ける「コンティニュアスAF」を併用することも可能だ。

一方、ファインダー撮影時のAFも進化した。測距点の数はこれまでと同じ9点だが、その全点がクロス測距に対応。動体や多少薄暗いシーンでもてきぱきと合焦し、ストレスは感じない。

ファインダーは、これまでと同じく視野率約95%で倍率約0.85倍のペンタダハミラーを採用。見やすさはエントリー機として標準的

ローパスフィルターに付着したゴミを超音波振動でふるい落とす独自のダスト除去機能を搭載。電源ON/OFFの際に自動実行できる