――ちなみに、水木さんの中で「アニソンはこうあるべき」みたいなものはありますか?
水木「アニソンはもともと子どもたちのためのものなんですよ。もともとは漫画の歌ですから。今では深夜番組の大人向けのアニメの歌でも、アニソンということになりますが、やはりもともとは良い物を作って子どもたちに残してあげたい、そんな気持ちから出来上がったものだと思うので、子どもたちが歌える歌であり、それで育った大人たちの心にいつまでも残る歌、そうでないといけないなって思います。やはりアニソンは誰もが通る道、国民の歌だから、みんなが歌えないとダメですよね。あと、あまり外国の曲を真似しないでほしい。外国の歌をリスペクトするのは大変すばらしいことですが、二番煎じではオリジナルを越えられないし、一流として認められない。世界中が日本のオリジナルとしてアニソンをリスペクトしているんですから、やはりこれから生まれる新しいアニソンも、日本が誇れるものであってほしい。アニソンの本質を理解していないのなら、アニソンという業界を利用しないで、J-POPやロックの世界でやってほしいなと思います」
――話は変わりますが、今年の夏はアニメロサマーライブにも出演なさいました
水木「27,000人の"Z"はビックリしましたね。完全にシークレットだったんですが、登場したとたん、一瞬にして赤いサイリウムで迎えてくれましたね。やはり、みんな王道ソングも楽しみたいという気持ちがあったんでしょう。一緒に歌える歌を歌ってくれてありがとう、みたいなところもあったのかなって思いました」
――たくさんの歌手の方との共演になったわけですが、若いアニソン歌手の方をご覧になっていかがでしたか?
水木「皆さん、すばらしいと思いますよ。水樹奈々ちゃんなんかもちゃんと挨拶をしに来てくれましたし。すごく礼儀の正しい子でしたね。小さい頃からちゃんとした教育を受けているんだろうなって思いました。すごくいやらしい話ですが、僕は、何人の若い子が楽屋まで挨拶に来たかというところまでちゃんとチェックしているんですよ」
――ちゃんと見ていらっしゃるんですね
水木「挨拶をするというのは、もう基本ですからね。俺たちが敷いてきたレールの上で、歴史も知らずに歌っているんじゃないよっていう気持ちもありますし。温故知新じゃないですが、ちゃんと歴史は勉強しないとね。たとえばプレスリーが出てきたとき、総スカンを食らいましたね。あんなヤツは教育上良くないとか、あんなのは歌じゃないとか。でも、彼はちゃんとウェスタンとか、昔からアメリカにあるブルースの曲をロックンロールとしてちゃんと確立させたから、今でも残っているわけですよ。ウェスタンはダメとか、ブルースはダメとか、そんなんじゃない。ジャズだって同じで、モダンジャズが出てきたときは、こんなのジャズじゃないって言われましたけれど、ちゃんとしたベースがあったので、結果として新しいジャズとして認められたわけですよ。これはアニソンも同じだと思うんですよね。ちゃんと昔のものを勉強した上で新しいものを作るから確立するわけで、歴史を否定して新しいものを作ったと錯覚しても、それはちょっと難しいかなって思います」
――そういう点で、最近のアニソンについてはどのようにお考えですか?
水木「いいんじゃないですか。新しい歌でも覚えやすい歌がたくさんありますし、時代が変われば、それに従って変わっていくものもありますから。ただ、ターゲットだけは間違えないでほしいですね。これは特にスタッフに言いたいのですが、アニソン歌手をただの商品にしないでほしい。もちろん、歌手は商品なんですけど、今のやり方だと、あの子たちは10年、20年と歌い続けることができないんじゃないかなって思うんですよ。今儲かっているから、今のうちに売っちゃえというスタンスじゃダメですね」
――水木さんのように40年歌い続けられるように
水木「そう。そんな風に育てていってほしいですね。あと、たとえば僕やささきいさおさんがアニサマのステージに出たとき、27,000人がひとつになりましたよね。あれを若い子たちはちゃんと見て、学んでほしいです。あの客席にいるファンの子たちは、自分の目当ての子の歌は聴くけど、それ以外には興味がないとか、そんな話をいっぱい聞くわけですよ。でも、アニソンというものはそうじゃない。どんな場所で歌っても、その1曲で27,000人がひとつになれる、そういう歌手を育ててほしいです」
――水木さんやささきさんの27,000人をひとつにできるパワーはすごいと思います
水木「それはなぜかというと、みんなが知っている歌を歌っているからなんですよ。だから、みんなが知っている曲、長続きできる曲、そういう曲を作って、歌っていってほしいですね」