――これまでに水木さんがお歌いになった曲は1200曲にも及ぶということですが
水木「今回のDVDに収録されていない主題歌もまだまだありますし、挿入歌もある。劇場版主題歌もあれば、ゲームやCMの歌もあるしね。あと"うたのおにいさん"なんかもやっていましたからね」
――"うたのおにいさん"もやっていらっしゃったんですよね
水木「やってましたね」
――当時、"うたのおにいさん"の水木さんも拝見していたのですが、『マジンガーZ』の主題歌を歌っている人と同じ人だとはまったく思っていなかったんですよ
水木「誰も思っていなかったと思いますよ。『マジンガーZ』を歌っている人がNHKの『おかあさんといっしょ』でうたのおにいさんをやっているなんて、誰も思っていなかった」
――やはり、そうだったんですか
水木「だから、当時はショーなんかに出るときも、カラオケを2種類用意していたんですよ。客席に幼児が多いときは『おかあさんといっしょ』の歌を歌い、そこそこの年齢層になっているとアニソンに切り替える。そんな感じで、なかなか面白かったですよ」
――今考えるとすごく不思議な感じです
水木「普通、『マジンガーZ』やほかのアニソンを聴いたことのある人が『おかあさんといっしょ』を見れば、『あ、同じ声だ』と思うじゃないですか。それが思わないんだよね」
――声を変えて歌っていたわけではないですよね
水木「変えている意識はまったくなかったんだけど、歌によって僕の声帯って変わってしまうんだと思うんですよ。発声から違ってくる。だから、当時は誰もわかっていなかったんじゃないかな」
――1200曲の中で特に印象に残っている曲は何ですか?
水木「『原始少年リュウ』でデビューして、『超人バロム・1』や『マジンガーZ』を歌って……どれもこれもヒットしていい曲だし、何十年も残っていい楽曲だと思うんですけど、『マジンガーZ』は視聴率が30%以上を取っていたということもあり、やはり皆さんに一番知られているだろうなと思って、メインで歌っているところもあります。ただ、いろいろなヒーローたちに出会えて、自分がそのヒーローたちになりきって歌ってきたので、やはりいずれの楽曲も印象的ですね。『プロゴルファー猿』なんかは、僕の歌とは知らずに皆さんもビックリなさったかもしれませんが、それもまた面白さのひとつだと思っています」
――本当に幅広く歌っていらっしゃいますよね
水木「あと、そんな中でも印象的なのは、1999年にやらせていただいた24時間1000曲ライブですね。これが成功するなんて誰も思ってなかったし、自分自身も思っていなかった。ただ成功させたいという思いだけで、成功しちゃったんですよね(笑)」
――1000曲ライブの話が出たときは即答で引き受けたのですか?
水木「いや、まさか(笑)。冗談だと思っていたら、番組でお客さんを募集しちゃいましたよって、何だかやらなきゃダメみたいな雰囲気になっていて……。なので、それから半年かけて準備をしました。まずは自分の曲探し。自分の歌った歌の音源や資料というのを全然整理していなかったんですよ。意外といいかげんな男なので。せっかくいただいたゴールデンディスク賞なんかもその辺に積み重ねて置いているぐらい、本当に過去への執着というものがないんですよ、僕には(笑)。で、いろいろな人に協力してもらって、何とか1000曲集めて、やってみたら成功しちゃった。1000通りのヒーローになって歌えるというのは、本当に楽しくて仕方がなかったです」
――これはもう水木さんにしかできない偉業ですよね
水木「普通だったらギネスに申請するとか、俺は1000曲も歌ったんだぜ、みたいなことを言いたいじゃないですか。でも、そのときは、俺はこれで終わりじゃないよなって思ったんですよ。まだまだこの先に何かがあるはずだって。アニソン界の未来は、これからどのように輝いていくかわからない。長く続けていれば続けているだけ、いろいろな人やいろいろな歌との出会いがある。まさか、テレビでこんなに取り上げてくれたり、世界中に行ったりするなんて40年前には想像もできなかったですから。でも、その40年前の僕の気持ちが、ちゃんと観てくれている人に伝わっていたからこそ今があると思うし、その当時につまらない歌を歌っていたら、絶対にこんなことにはなっていなかったと思います」