従来のAndroid 2.xとの違い

ユーザーインターフェイスがHoneycombライクになったことで、ICSの操作方法は一部で従来のAndroid 2.x系とは異なるものとなっている。その1つはOSの設定画面の呼び出し方法で、従来はホーム画面で「メニュー」ボタンを押すことで呼び出していたものが、ICSではアプリ一覧から「設定」アプリを呼び出して行うことになる。そのため、あらかじめホーム画面にアイコンを配置しておくと便利だろう。また専用のメニューボタンがGalaxy Nexusでは排除されていることで、各アプリでのメニューの呼び出し方法も変更されている。各アプリの画面を見ていると、どこかに小さい四角が縦に3つ並んでいるアイコンを発見できるはずだ。これを押すことでメニュー画面を呼び出せる。ただ、このアイコンの出現する場所がアプリによって大きく異なるため、この統一感のなさをOSの将来バージョンでなんとかしてほしいところだ。

機能面での違いでは、まずストレージの容量で「内蔵」「外部」の区別がなくなっていることが挙げられる。今回のサンプル機の場合、本体に標準で16GBのフラッシュメモリが搭載されており、この空き領域をすべて標準ストレージとして利用できる。そのため、従来であれば内蔵ストレージ不足でアプリがほとんどインストールできないといったAndroid特有の現象に悩まされていたものが、このGalaxy Nexusでは経験せずに済む。もっとも、これがGalaxy Nexus特有のもので、今後発売されるICS端末すべてに該当するかは検証が必要だが、もし全体の話ならば、Androidにとって大きな一歩だといえるだろう。なお、Galaxy NexusではSDカードスロットを持たないため、これ以上のストレージ拡張は行えない。

Webブラウザはタブの切り替え方式がHoneycombライクになっている以外は、ほとんどの部分で従来のままだ。注意点としては、現時点でICSはFlash Playerをサポートしておらず、Flashコンテンツや同機能を利用した動画プレイヤーを使えないことだ。モバイル版Flash PlayerについてはAdobe Systemsが開発中止をすでに表明しているが、2011年中にICS版Flash Playerの提供を行うという話も出ており、今回に限っては比較的近い将来に対応バージョンが提供されると期待してもよさそうだ。

このほか設定メニューに追加された新機能として、ネットワーク使用量を集計するクォータを設定する機能に注目したい。これは、期間を設定してその間のネットワーク容量の上限を決めることが可能なもので、上限に達した段階で警告メッセージを出したり、ネットワーク通信を停止したりといった設定が行える。米国などでは「1カ月に2GBまで」といった上限(容量キャップ)の設定された料金プランが提供されているが、この機能を使うことで自衛的に使用容量超過を避けることが可能になる。もっとも、あくまで端末内での集計データということで、実際にキャリアが行う集計方法やデータ容量とは異なる可能性が高いので注意したい。あくまで目安だ。

そしてICSとGalaxy Nexusの特徴を端的に示す2つの新機能が「Androidビーム」と「Wi-Fi Direct」だ。Androidビームは、NFCを使ってAndroid端末同士でデータ通信を行う仕組みだ。Androidビームの設定が有効になっている場合、端末のNFCのアンテナがある部分(通常は背面)同士をタッチすることでAndroidビームが起動する。どのアプリが起動され、どういった動作になるかはアプリに依存する。例えばWebブラウザやGoogle Mapsで特定のページや場所を開いていた状態でタッチすると、対向の端末にはその情報がそのままコピーされ、それぞれ該当のアプリを開いてそのページを表示する。動画であればタッチした時点で見ていた場所がそのままコピーされて閲覧が可能で、連絡先アプリであれば住所情報がコピーされるだろう。ちょうど日本の携帯でいう赤外線通信みたいなことが可能になるわけだ。ただNFCで転送可能なデータ量はそれほど多いわけではないため、ファイルコピーなどは難しい。もし大容量データを直接転送したい場合には、Wi-Fi Directを使うといいだろう。こちらはWi-Fiアクセスポイントを経由せずに、直接ターゲットの端末にWi-Fiでのデータ送信を可能にする技術だ。Wi-Fi Directが有効になると、端末のWi-Fi経由でのネットワーク接続やテザリングはできなくなるため、あくまで使うときだけオンにしたほうがいい。なお両機能とも対向となる端末が必要となるため、現時点でICS搭載端末がGalaxy Nexusしかない以上、実際にテストすることはできなかった。友人の少ない筆者みたいな人間には少々寂しい機能といえるかもしれない。

もう1つ、Android 2.x系と大きく異なって注意が必要なのが、PCとの接続方法だ。従来であれば、USB経由でPCに接続することでAndroid端末は「USBマスストレージ」として認識され、そのまま外部ドライブとして利用することが可能だった。ところがICSではHoneycomb同様にファイル転送はMTP (Media Transfer Protocol)またはPTP (Picture Transfer Protocol)を利用することとなっており、USBマスストレージとしては接続できない。