携帯電話の基地局は、7日12時時点で岩手県44局、宮城県91局、福島県41局の計176局が停止しており、11台の車載型基地局が派遣されており、移動しているため現時点では6台が稼働しているという。フェムトセルは9台が稼働している。車載基地局は1台で50回線、フェムトセルは1台で6回線が同時利用できる。
復旧させた基地局は、本来下向きに電波を発信するアンテナの角度を上向けにして、より遠くまで電波が届くようにした「大ゾーン化」を行っており、アクセス回線として衛星や無線を活用するなどしており、避難指示が出ている福島第一原子力発電所(原発)の20km圏内にある30局を除けばほぼ震災前の状況までエリアは復旧している。
この30局を除く146局のうち93局は4月末までに復旧の見込みだが、残る53局は津波に流されるなどしたため、4月末までに新規基地局の建設に着手。9月までの復興フェーズで避難所などの重要拠点を中心に復興を図り、その時点でサービスエリアと品質で震災前と同等までこぎつけたい考えだ。auでは2012年の周波数再編に向けて旧800MHzの基地局を新800MHzに置き換える作業を続けていたが、修理できる旧800MHzの基地局は復旧を優先し、全壊した基地局はすべて新800MHzに置き換えるという。
福島原発の制限エリア内については、東京電力の要請で第一、第二原発内、原発対応拠点の「Jヴィレッジ」向けに基地局を貸し出しており、屋内のみのカバーをしているという。
固定網は、東北自動車道の路肩に光ファイバを敷設していたが、これが震災で切断。海底ケーブルは仙台の局舎が全壊したため利用ができなくなり、電力系のアクセス網だけが残ったという。「3重のルートのうち2つが切れたことは憂慮している」と田中社長。今後、ほかの地域のアクセス網に関しても、対策の見直しが必要との認識を示す。現在は秋田県と新潟県のルートから回線を引いているそうだ。
個人向けの固定網は99%が復旧し、4,097回線が停止しているが、これは個人宅での回線確認ができていないためで、通信設備から個人宅への通信回線と宅内設備の調査・復旧対応を順次進める。企業は97%が復旧し、VPN・専用線は433回線、インターネットは6回線が停止している。こちらも通信設備から企業への通信回線と宅内設備の調査・復旧中。企業によっては移転などもあるため、その対応も進める。
au携帯電話の販売店であるauショップは、全182店のうち11店が全壊、42店が修理が必要で、福島原発付近の3店を含めて16店が営業を停止しているという。こちらも順次復旧を進める。
田中社長は、「KDDIは通信事業者であり、通信をちゃんと提供し続けることが非常に重要であることを改めて認識した」と発言。震災後の初動は速く、復旧も順調だったとの認識を示しつつ、「非常に大きな影響が出た」と指摘。物資だけでなく、ガソリン不足による影響も受けており、「準備をもっとやっていく必要性を改めて感じた」と話す。