――民間時代の林市長は『現場主義』でよく知られていましたが。

林市長 : 例えば社員がどうお客さんと向き合っているかを知るには、社長室にいて会議をしているだけでは分からない。でもショールームに行けば分かる。『現場』は、いろいろな意味で、イマジネーションを高めてくれます。

市長の仕事でも同じこと。横浜市では現在「横浜市で仕事をしてください」「本社を横浜市に持ってきてください」と企業誘致に力を入れています。そこで横浜市の東京事務所(千代田区)に、企業誘致のために営業チームを置いています。セールスは5年も10年も長い間続けることが大事。そうすると「急に会社を移転しなければならなくなった」といった事態になったときに「そういえば横浜市の人はよく来ているから、お願いしようか」となるのです。それが営業というものです。

昨日、その事務所に立ち寄ったら企業誘致チームの責任者がお客様と話していました。そこで「横浜市がいつもお世話になっています」と挨拶したんですね。その方は不動産会社の方だったんですが「まったく面識がないのに市長から『ありがとう』と言われた」と驚いていたそうです。でもそれは普通のこと。現場を大切に、チームで取組んでいることですから。これが『現場主義』です。

子育て支援でも、地域に出向き、直接お母さんの声を聞いています。核家族の中、在宅で、不安を抱えて子育てをしているお母さんの様子がよく分かります。保育所の待機児解消など働いているお母さんの支援だけではなく、皮膚感覚で必要とされている施策を感じ、実に多様な子育て支援策に取組んでいます。

2013年度の待機児童ゼロを目指す

――林市長はさきほど「経済界はいま女性の力を活用しようと本気になっている」とおっしゃいました。そのためにもやはり待機児童の解消は非常に重要かと思いますが、横浜市では具体的にどんな解消策を進めているのですか。

林市長 : 横浜市は、昨年4月時点で待機児童数が全国でもっとも多い1,552人となった自治体です。こういう経済事情だから保育所に預けたいという人はどんどん増えているし、企業も女性の職場復帰を考えています。ですからなんとかして2013年度中には待機児童を解消すると決めています。

まず、市長就任直後には局区横断的な待機児童対策の庁内プロジェクトを設置しました。そして、2010年度には緊急保育対策担当を設置したのです。2011年度の主な事業は、認可保育所の整備はもちろんのこと、保育料や保育環境、保育時間など、市が独自に設けた基準を満たす、待機児童がとりわけ多い0~2歳児を保育する施設を「横浜保育室」として認定し助成しています。例えば園庭がなくてもいいとかそういう基準を緩和したわけです。NPO法人などを活用した保育ママのような事業もしています。幼稚園での一時保育や、事業所内保育施設整備の助成などもやっています。今年4月からは送迎保育ステーションという新しい事業も始まります。これは一時的に児童を預かる送迎保育ステーションを駅近くに整備し、複数園との間で3歳以上のこどもをバスで送迎するもので、最寄りの保育所に入れなくても定員に余裕のある離れた地域の保育所に預けることが可能となり、親のニーズと保育所の空きのミスマッチが解消できるようになります。

待機児童対策以外では、赤ちゃんが生まれてから4カ月までに児童委員が必ず一回家庭を訪問するという「こんにちは赤ちゃん訪問事業」や、子育て支援拠点の設置・運営にも力を入れています。

私もできるだけお母さんたちが集まる場所に足を運び、子育ての実情を聞くようにしています。ぜひ及川さんにも子育て支援について意見をお聞きしたいですね。