待機児童日本一ともいわれる横浜市。そこで待機児童解消をはじめとする子育て支援を公約の第一に掲げ、最重点課題として取組んでいるのが、BMW東京代表取締役、ダイエーCEO、日産自動車執行役員を経験した林文子市長だ。いまなぜ子育て支援が急務なのか。どんな支援が必要なのか。仕事と育児の両立に奮闘中のトレイダーズフィナンシャル代表取締役社長・及川佳奈子さんとの対談形式で話をうかがった(取材日 : 2月16日)。

林文子市長(写真手前)と及川佳奈子氏

今こそ女性の力が必要

――林市長が横浜市初の女性市長に就任してから約1年半。保育所に入れない「待機児童」の解消をはじめさまざまな子育て支援に取り込んでいらっしゃるそうですが、以前から子育て支援の重要性については感じていらっしゃったのですか。

林市長 : 子育て支援の必要性を痛切に感じるようになったのは社長職に就いてからです。1999年に初めて外資系の社長職に就き、もっと女性に活躍してもらいたいと社内の女性を見ていたのですが、子育てというところで立ち止まってしまう女性が多かったのです。車のセールスの場合は女性の方が優秀なくらい。それなのに保育所がみつからなくて仕事を辞めざるを得ない、子育てで昇任のチャンスもあきらめなければならない。若い働く女性が苦しんでいる姿を見て、これは必ず解決していかなければならない、でも一企業での取組みでは全てを解決するのは難しいと思いました。

――市長として子育て支援に取り組んでみて時代の変化は感じますか。

林市長 : グローバル経済で厳しい時代。女性の労働力なくしては立ち行かない状況です。及川さんもお分かりだと思いますが、大体、今まで男性主導でやってきましたが、それでいま行き詰っています。そうなるとあとは女性が入らないと仕事の質は上がらないのです。だからこそ、ここで女性の考えや感性を入れれば飛躍できるわけです。今は熟成して踊り場に来ていて、それ以上に上がれなくなっている。そこには女性の力がとても必要。そうしないとこれ以上レベルが上がらないのです。

1986年の男女雇用均等法のときはみんな"半信半疑"でした。「国は決めたけど、実際そうはいかないでしょ」というのが企業側の考え。でも今は違います。いま企業は困っているわけです。そして今こそ女性の力が必要だと分かっている。絶対に女性の力が必要だというところに来ています。だからこれはすごいチャンス。大企業が今、真剣に「どうしたら働く女性に活躍してもらえるだろうか」と考えているわけです。そこで大きなテーマとなるのが出産・育児のサポートですよね。先日も大メーカーの社長が「社内に保育施設を作りたい、近隣の企業と一緒に保育所を作れないか」と自らおっしゃっていました。女性の力を活用しようということが本気の時代なんですよ。