――それにしても豪華なメドレーですよね

ささき「そういう意味では、僕はいい曲に恵まれたといいますか、いい作品に恵まれたと思います」

――今回、数あるささきさんのヒット曲の中から、メドレーとしてこの3曲を選んだ理由は何ですか?

ささき「やはり『キャシャーン』は激しい曲だし、アニメのデビュー曲。『999』を間に挟んで、しっとりと詞を伝えて、最後は勇壮な『ヤマト』というのは、ある意味では僕の中のパターンであり、代表格ですからね」

――1月2日に行われたコンサートでもたくさんの曲を歌われていましたが、みんなが聴きたい曲、そしてささきさんが聴かせたい曲はまだまだあると思います

ささき「2日のコンサートで6曲メドレーをやったのですが、普段あまり歌っていない曲があると、気持ちがそこにいっちゃうんですよ。歌詞を間違えちゃいけないって。そうすると、ほかのところで、ふっと抜けることがあって。それで2カ所ぐらいやっちゃったんだけど(笑)。僕はモニターに頼りたくないんですよ。やはり自分の中に歌詞があって、それを伝達できなければいけないという信念がある。それが年齢的にきつくなってきている部分もあるんだけど、でもやっぱりあきらめたくないですね」

――これまでの歌は基本的にすべて覚えていらっしゃいますか?

ささき「まあ、覚えているつもりで(笑)。ずいぶん家でも練習してから行くんだけど、僕は歌いながらすごくいろいろなことが気になるんですよ。お客様の顔ももちろん、音がどうやって伝わっているかとか、いろいろなことを感じながら歌っているので、どこかでふと気持ちがそちらにいってしまうと、瞬間的に歌詞が飛んだりする。"宇宙"とか"銀河"とか、同じような言葉だとわからなくなっちゃうことがありますね(笑)」

――ささきさんの歌を初めて聴いたお子さんが、すぐに覚えて、今では家族で一緒になって歌っているなんて話もあります

ささき「うれしいですよね。僕らが歌っていたころのアニソンは、メロディックだから覚えやすいし、歌いやすいんですよ。特に子どもはそういう歌のほうが覚えやすいでしょうね。うちの奥さんの孫が2歳なんだけど、お母さんがよく僕の歌を聴かせているらしくて、『象だゾウ』とかを歌うとすごく喜んでくれる(笑)。うちの奥さんのお母さんが僕のロカビリー時代のファンで、うちの奥さんはアニメも好きなんだけど、息子はまさにアニメ世代。そしてその子どもですからこれで四代目。これはもうアニソンならではですよね」

――たしかに昔のアニソンは覚えやすいですよね

ささき「それはコロムビアの姿勢でもあって、難解な曲を作るよりも、子どもが口ずさめる曲というのが前提にあったんですよ。最近、地方のイベントにいくと、本当に幅広い層の方がいらっしゃって、お年寄りの方もすごく喜んでくれる。昔はテレビにも出ていたので、『あ、ロカビリーをやっていた人だ』みたいなこともあるんだと思いますが。あと、アニメファンが何人かいてくれると、すごくノリがいいですね。もう率先してノってくれるから、客席全体が盛り上がる。これが非常にうれしくてね。『これ、本当に店頭のイベント?』っていうぐらい、笑顔と拍手がすごいんですよ。本当にうれしいですね」

――今回、テレビで実際に歌い、トークをしてみて、あらためて感じたことはありますか?

ささき「僕自身の音楽世代といえばやはりエルビスからなので、昭和の音楽なんですね。そのあと、アレンジャーがいろいろとやってくれて、いろいろな勉強をさせてもらって、ノリもずいぶんと覚えましたが、根本的にはやはり昭和の人間で、ロックンロールと歌謡曲の世代なんですよ。そのあたりが今日は伝えられたかなって思いますし、そういったことを理解していただいたうえで聴いていただくと、また違った印象になるのではないかと思います」

――ささきさんの歌は低音の魅力によって、聴く方に安心感を与えられるのではないかと思います

ささき「そういったことを言ってくださる方が多くてうれしいですね。新しいポップスが流行っていても、低音は低音でやはり独自の世界ができるんだなって思いましたし、逆に言えば、彼らにできないことを僕ができるのかなっていう気がします」

――ささきさんの歌はたしかに低音ですが、音域はすごく広いですよね

ささき「そうそう(笑)。しかも、最近というか、ここ何年かで音域がすごく広がっているんですよ。上が楽になってきました。今までは上に力を入れすぎていたんですけど、最近は楽に出るようになってきましたね」

――さらに成長しているわけですね

ささき「自分でも不思議なんですけどね(笑)。これはもう僕自身というよりも神様が歌えと言っているのではないかと思います。『倒れるまで歌いなさい』ってことなんだなと。以前、吉田正先生に言われたんですよ、『君は低音もいいけど、高音もキレイだ』って。それがまた励みになっていますね。それで、僕自身も捨てている部分があったんだけど、高音も磨かなきゃって。やっぱり一生勉強だよね(笑)」

(次ページへ続く)