――収録当時のお話が出ましたが、そのほかで何か印象的なエピソードはありますか?

大原「『×××HOLiC』の場合、基本的にレギュラーメンバーが少ないうえに、メインとなるゲストの方が一人二人いらっしゃるという感じだったので、比較的少ないメンバーでの収録だったんですよ。なので、百鬼夜行の回(第18話『ホオズキ』)などは、かなりの大人数で『×××HOLiC』ではめずらしい賑やかさがあって楽しかったですね。あと、若手だけではなく、なかなか普段お会いできないベテランの方がキャスティングされることも多くて。たとえば、百鬼夜行の回の池田昌子さんだったり、古川登志夫さんだったり。そういったベテランの方から刺激を受けることも多く、ほかの作品ではこんな掛け合いは二度とできないみたいなお芝居の空気を感じられて、すごく勉強になりました」

――百鬼夜行のほかに印象深い話などがありましたら教えてください

大原「『×××HOLiC』の場合、お話によってまったく世界観といいますか、カラーが違っていて、もちろん底辺に流れているちょっとした人間の業をえぐるようなミステリアスな雰囲気は変わらないのですが、ごちゃっとしたお遊びの回もあれば、本当にミステリアスな回もある。なので、一つに絞るのは難しいのですが、すごく印象に残っているのは第17話の『ジショウ』ですね。この回は、人数の少ない『×××HOLiC』の収録の中でも最少人数記録みたいな回で、動き自体も極端に少ない回だったんですよ。アニメというより、少人数で舞台をやっているような感覚で、ワンシチュエーションドラマにように、ずっと画面が切り替わらずに延々と長ゼリフのやりとりがある。そこには、絵や表情にあわせて抑揚をつけたり、掛け合いでテンポを掴んだりという普段の感覚とはちがった緊張感があって、その何かピリっとした感覚が気持ちよかったですね」

――ちなみにそのあたりの演技について、水島監督からはどのような指示がありましたか?

大原「監督は基本的に投げっぱなしです(笑)。好きにやってくださいって感じでしたね。侑子さんであればそれでいいし、四月一日であればそれでいいっていう方なので、ほぼ何もおっしゃらなかったんですよ。私が覚えている限り、監督がこだわったのはモコナの芝居ぐらいですね。『もっと元気にやってもいいんじゃないの?』みたいな。本当にそれぐらいでした」

――侑子の役作りについても、特に指示はなかったのですか?

大原「何にもなくて、逆に不安になるぐらいでした(笑)。それだけ信用していただいているのかなって思っていましたが、監督の場合、いつも後ろで"ははは"って笑っている表情しか覚えていないです。もちろん音響監督の若林さんからの細かいディレクションはありましたが、本当にノビノビと収録をさせていただきました」

――話は変わりますが、キャラクターの絵を最初に見たときの印象はいかがでしたか?

大原「もう本当に私好みの絵なんですよ。私はお着物が好きでよく着るのですが、『×××HOLiC』の雰囲気はまさに理想で、こういう格好をしてみたいとか、こういう雰囲気でちょっと写真を撮ってみたいとか、そういう風に思っていた世界観がそのまま『×××HOLiC』だったんですよ。だから夢みたいでしたし、いろいろな洋服だったり、和服だったり、チャイニーズだったりを着て、コスプレみたいな感じで登場する侑子さんを毎回楽しみにしていました」

――髪型も服装にあわせるようにいろいろと変わっていきますよね

大原「いろいろなことができるようにシンプルな髪型にしたと先生もおっしゃっていたのですが、本当に先生方も楽しんで描いていらっしゃったのだと思います。今度侑子にどんな髪型をさせようとか、どんな服を着せようとか。本当におしゃれのしがいがあるキャラクターなので、女の子は特に見ていて楽しいのではないかと思います。」

――バラエティに富んだ髪型や服装もそうですが、『×××HOLiC』を観ていると、侑子は常に食べ物の話をしている感じがします

大原「生身の身体を持ってここに存在しているのなら、心地よいことや楽しいことをとことん追求! という感じでしょうか(笑)。で、一番いろいろ楽しめるのがおいしい食事にお酒。あの食べっぷりや飲みっぷり、みていて気持ちがいいくらい! 私自身もおいしいモノやおいしいお酒は大好きなので、縁側でおつまみを作ってもらいながら、日本酒っていうのは本当に憧れのスタイルなんですよ(笑)。なので、やっていて本当に楽しかったです」

――侑子のムリな要求に応えていく四月一日もすごいですよね

大原「文句をいいながらもちゃんとやるじゃないですか。本当にいい人ですよね。『一家に一台、四月一日』って、現場ではみんな言ってました(笑)」

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