「環境と文学」をテーマにした著名作家らの講演も

環境と文学をテーマとした今大会では、電子書籍のシンポジウム以外にも環境保護や社会環境をテーマとした数多くのプログラムを用意。カナダの詩人でブッカー賞をはじめとする多くの文学賞を受賞しているマーガレット・アトウッド氏と、2000年に華人として初めてノーベル文学賞を受賞した高行健氏の基調講演も行われた。

マーガレット・アトウッド氏

「作家が何を書いて何を書かざるべきか、説教じみたことを言うつもりはない。それは、私自身の首を絞めることにもなるから」と冗談を交え、穏やかな口調で講演したアトウッド氏。「空気や水、食料がなければ、人は生きられず、文学は存在しない。人がいなければ、読者もいない」。「環境保全は、文学が成立するための大前提」と、広い視点で自然環境の大切さを説いた。また、「文学は、自然の中で種を存続させる知恵を伝えるために生まれた」とも語り、「シャーマンが死者や別世界のことを語る中にも、(自然の)事実が含まれている」と、詩人らしい言葉で自然に対する文学の存在の意味を語った。

高行健氏

天安門事件を背景とした劇作『逃亡』(1990年)を発表し政治亡命した経験を持つ高氏。「自然や社会環境は、文学にとって重要なトピック。しかし、破壊は加速するばかり」。「作家には権力や特権などはない。できるのは、創作の中でその時の社会の苦境を描くことだけ」と、社会環境に関して文学が担う役割について説いた。また、文学と政治の関わりについても。「文学は政治やイデオロギーを超越したものであるべきだ。文学が政治に介入してはいけない。奉仕させられるだけだ」。

文学以外に、漫画作品やアニメを題材とした企画も行われた。「マンガとアニメは環境をどう描いてきたか? 現代マンガのパイオニア・手塚治虫の作品から」では、手塚治虫の作品をもとに、漫画やアニメが「環境」をどのように描いてきたかが語られた。

1953年に発表された、環境をテーマとした手塚作品『赤いネコ』などが話題に上り、戦後の復興活動が盛んな時代に、既に環境保護への意識を持っていた手塚氏の先見性などが語られた