特に孫社長は今年を「スマートパッド元年」としてiPadを積極的に拡販。企業導入も順調で、たとえば紙のパンフレットや申込書を持ち歩く営業マンはすべてiPadなどのスマートパッドに置き換わる、と指摘。さらに「重く、起動が遅く、バッテリーが持たない」(孫社長)ノートPCについても、極論としつつ「ノートPCを持ち歩くのは恥ずかしい時代が来る」(同)と指摘する。孫社長自身、iPadのOSバージョンアップやデータ同期以外ではPCを利用せず、それ自体も秘書にやらせているという。「時間の無駄だし、方針としてもうPCには触らない」(同)考えで、すでにPC利用はゼロになっているそうだ。長文入力時は、自宅と会社にキーボードドックを持っており、それにiPadをつないでいるという。

今年のスマートパッド元年からスタートし、今後数年でノートPCを追い抜いてスマートパッドが伸びるとの予測。ただし、スライドで示されたPCとスマートパッドの比較は、明らかに性格の異なる製品を比べており、恣意的な図ではある

この勝利の方程式で目指すのは、「4,000万回線構想」だ。現在の約2,400万契約から、2010年代の間に4,000万契約まで拡大させることを狙う。しかも、従来のように一定のARPUを保ち、利益を確保し、負債の返却も行いながら、「口に出したからには何が何でもやりたい」(同)考えで、しかも実現には「10年はかからない」(同)と自信を見せる。

これに対して小野寺社長は、「いい意味でも悪い意味でも、この10年間でこれほど変わると思っていなかった」と話し、業界の変化に驚きを隠さない。ただ、小野寺社長は「この業界で1社だけが常勝というのは考えにくい」と冷静だ。それでも、小野寺社長はスマートフォンの遅れに対しては戦略ミスを認め、「力の入れ方がフィーチャーフォンに偏っていた。グローバル端末をそのまま国内に持ち込むことに少しこだわれば、もう少し早く導入できた」と反省の弁。

さらに小野寺社長は、上期の純増シェアがソフトバンクの160万、ドコモの81万に対して42万にとどまった点にもスマートフォンの遅れが影響したと分析しており、今期はMNPで流出が上回ったことも、スマートフォンの影響が一番大きいとみている。

とはいえ、「モバイルインターネットで1位をとって4,000万契約」と気炎を吐く孫社長に対して、小野寺社長は固定網、CATV、モバイルと全方位の通信プラットフォームを持つKDDIの優位性を強調し、これをどう活用していくかを課題としている。

なお、今後のフィーチャーフォンの展開について、ドコモは3~4年でスマートフォントの比率が半々になると見ており、KDDIは来年度発売の端末の半分がスマートフォンになるとしている。ソフトバンクでは、iPhoneの取り扱い台数が公表できない分、その割合は公表していないが、孫社長は「他社よりもスマートフォン比率が高く、その比率は高まってきている」と話す。孫社長は、フィーチャーフォンは「かわいらしいものや簡単なもの、安いものは残っていく」とだけ語り、今後の展開については明らかにしなかった。

今後携帯3社は、Android搭載のスマートフォンを提供するドコモとKDDI、iPhoneで迎え撃つソフトバンクという構造になりそうだ。孫社長自身は、Android端末も販売するとはしつつ、主力がiPhoneであることには変わらず、孫社長自身もiPhone/iPadの「伝道師」としてのことあるごとに魅力を語っており、まさに「伝道師」的な位置づけを担っている。それに対する2社は、Android採用によりバリエーション豊富な端末を用意。先行するソフトバンクを追いかけていく考えだ。

さらに今後は、次世代通信規格となるLTEを12月下旬にドコモがスタートさせ、2社も2012年には追随する予定だ。28日にはイー・モバイルが下り42Mbpsのサービスを発表しており、高速通信規格のモバイルWiMAXとともに、通信速度競争も新たな局面を迎え、端末だけでなく通信インフラとしても、今後の競争はさらに激化していきそうだ。

ドコモが12月下旬にスタートさせるLTEサービス「Xi(クロッシィ)」。東名阪の地域で約1,000局の基地局からスタートし、12年度には15,000局、人口カバー率40%を目指す。高速、大容量、低遅延が特徴で、小野寺社長によれば、これまでビット当たりの単価を従来の1/5にできる、としてきたが、この単価をさらに下げられると見ているそうだ

KDDIは、ひとまずデュアルチャネルのEVDOマルチキャリアサービスを展開し、その後12年からLTEをスタートさせる。ソフトバンクは、いくつかの速度向上の取り組みをしているとのことで、「(11月4日の)発表会で一部は触れることになる」(孫社長)とのことだ