携帯会社の収益は、端末販売の収益やコンテンツ料金、ネットワーク利用料などがあるが、ユーザーからの利用料であるARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)が重要だが、現在、各社とも減少傾向にある。特に音声ARPUは大きく減らしている。ARPU全体ではドコモもKDDIも、07年の8割程度まで減少している中、ソフトバンクは08年ごろから減少が止まり、09年からは上昇を続けている。孫社長は「ARPUが(減少傾向から上昇に)反転したキャリアは世界でも唯一」と胸を張る。
このARPUの反転に大きく寄与したのがデータARPUで、iPhoneによってデータ通信量が増えたことが要因だ。対してドコモでは、総合ARPUが前年から220円減り、音声は310円の減少となっていた。音声の減少をデータARPUが多少カバーした形で、「一番大きな経営目標はデータARPUをどう上げるか」と山田社長は強調する。
KDDIは、総合ARPUが500円減、音声が540円減のところを、データは40円の増加となっている。小野寺社長も「スマートフォンがあればデータARPUは伸びる」と見ており、今後スマートフォンの投入とさまざまなサービスによってデータARPUを伸ばしていく考えだ。
具体的には、ドコモでは「動画に続くキラーコンテンツ」(山田社長)として電子書籍を投入し、10月28日からトライアルサービスをGALAXY Sなどのスマートフォン向けに展開する。さらに通信とITSの融合としてナビ機能も提供。ドコモでは今期110円のARPU増を狙っている。
ドコモが28日から開始した電子書籍サービスのトライアル |
KDDIでは、Skypeとの戦略的包括提携による音声通話、au one Marketといった独自サービスも展開していくほか、これまで定番だった国内携帯向けの機能も盛り込んでいく |
KDDIは、「通信トラフィックでの収入増は難しくなってきているので、それ以外でどう収入を上げるか」(小野寺社長)という視点から、「コンテンツメディアと海外需要」を示し、コンテンツでのARPU増と海外展開を視野に入れていく考えだ。
逆に好調のソフトバンクは具体的な「戦術」を今回は明確にしていない。その代わり、従来の携帯電話が減少してスマートフォンが主流になり、PCが減少してiPadのような「スマートパッド」が台頭し、その結果、iPhoneとiPadで首位のソフトバンクが勝利するという「勝利の方程式」(孫社長)を描く。