「スマートフォン導入の遅れが戦略ミスなのは間違いない」。KDDIの小野寺正社長はこう漏らし、「スマートフォンがライフスタイルの中心になってくる」とソフトバンクの孫正義社長は胸を張る。NTTドコモの山田隆持社長は「スマートフォンはパケット(利用料)を上げる大本命」と強調する。10月下旬、携帯3社の2010年度中間決算が出そろい、絶好調のソフトバンクと伸び悩むKDDIという明暗を分けたのは、スマートフォンに対する取り組みの差だった。今後、各社ともスマートフォンへの注力を強め、新たな競争に突入しようとしている。
5期連続最高益のソフトバンク、減収減益のKDDI
2008年にいち早くiPhoneを投入してスマートフォン時代の幕開けを演出したソフトバンクの上期決算では、売上高が前年同期比9%増の1兆4,650億円、営業利益が同19%増の3,155億円、純利益が9%増の768億円で大幅な増収増益を達成。初めて営業利益は3,000億円を突破し、5期連続の最高益を実現した。売上高に占める携帯事業は9,350億円となり、同13%増、営業利益は2,072億円で、同57%増だった。
ドコモでは、売上高が2兆1,382億円で同0.4%減、営業利益は5,315億円で同9.5%増、純利益は5,270億円で9.8%増となり、減収増益となった。端末の販売収入が1.7%減少するなど、収益が悪化しており、通期予想も従来の4兆2,220億円から4兆2,090億円に「微修正」(山田社長)している。
一方のKDDIは、売上高が1兆7,184億円の同0.3%減、営業利益が2,479億円で同1.2%減、純利益は1,370億円で同5.7%の減収減益。携帯事業では売上高は1兆3,052億円で同2.4%減、純利益は1,409億円で15.6%減だった。
今回の中間決算では、好調のソフトバンクに対して、ドコモは前年同期の減収減益に対しては回復基調を示し、いまだに苦境から抜け出せないKDDIという構図となった。この好不調の明暗を分けたとして3社の社長で一致した意見がスマートフォンだ。