家内工業で造る銘スパークリング
「ヴィットー-アルベルティ」 / ジェラール&アニエス ヴィットー(リュリー村)
リュリー村ではもう一カ所訪問した。クレマン・ド・ブルゴーニュの造り手である。クレマン・ド・ブルゴーニュとは、ブルゴーニュ地方で造られるスパークリングワインのこと。シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵(炭酸ガスを人工的に注入しない)で造られる。ブルゴーニュ全域では300ほどの造り手がいて、とりわけこのソーヌ・エ・ロワール県だけでその半分、その中でも銘醸地といわれているのがこのリュリー村なのである。
迎えてくれたのは2代目のジェラールと2004年に引き継いだその娘アニエス。祖父であるルシアンがそれまでの協同組合を1951年に独立、1961年にジェラールが引継ぎ、現在に至っている。当初からクレマンしか造らない泡のスペシャリストだ。
ブドウは自社畑12haで栽培する他、クレマン専科の契約農家からもブドウを仕入れ、年間40万本を生産する。現在は畑に3人、醸造に3人、事務に3人と小規模で、ジェラールが「日本にも行きたいんだけど、なかなか人手がねぇ」と嘆いていたのが印象的だった。
ここのクレマンは、近くにあるシャニイの町の三ツ星レストラン「ラムロワーズ」にもオンリストされていると前情報として聞いていた。なので、どんなにゴージャスな門構えかと気負って行ったのだが、入り口はシンプル。一歩中に入ってみると、こう言ってしまえば失礼かもしれないが、さながら町工場のようで少し気が抜けてしまった。
さらには、ジェラールのおしゃべりを聞いた通訳さん曰く、「今どきこんなブルゴーニュ訛り、久々に聞いた」と感心(?)しきり。そう、この(いい意味での)垢抜けなさから世界を魅了するワインを造ってしまうところがブルゴーニュのすごさであり、恐ろしさでもあり、まさに"小さきモンスター"であったのだ。