夫婦二人三脚で造り出すワインにブルゴーニュの縮図を見る
「ドメーヌ・エミール・ジュイヨ」 / ナタリー&ジャン・クロード(テュロメルキュレイ村)
先のマランジュがコート・ドールの南限になったので、ここから南がコート・シャロネーズ地区になる。両側をブドウ畑でびっしり埋め尽くされた国道74号線からはずれ、県道981号線沿いを南へ下る。ここまで来ると道沿いは、ブドウ畑とリンゴなどの果樹園、牧草地と様々。牛たちがのんびり草を食んでいる姿もチラホラ見え、心持ち牧歌的である。
シャニイの町から南下してブーズロン、リュリー、そして今回の訪問の最南端、メルキュレイに到着。メルキュレイ村。日本ではあまり馴染みがない名前だが、実はディジョンからマコンの町までの中で、村単独の作付け面積ではいちばん広く(マコンの町よりも南のプイィ・フュイッセやサン・ヴェランは除く)、約650haを誇る。
訪れたドメーヌ・エミール・ジュイヨは、ナタリーとジャン・クロードの夫婦2人で切り盛りしている。妻ナタリーの祖父がこの地に設立し、同時に当時村長だった祖父が隣村と合併して今のように広大な作付け面積となる。とはいっても彼らが所有するのはわずか11haだ。なにしろこの村の中には35の生産者、醸造所を持たずにブドウを造って売っているだけの農家も含めて360人もの所有者がいるのだから。
造るワインは村全体では赤が90%以上だが、このドメーヌは白を20%ほど造っている。白も赤もわりかた隣接しているプルミエ・クリュのワインをテイスティングし、その土地の土も見せてもらったのだが、これがおもしろいほどわかりやすい違いがある。まず白ワインはシャン-マルタンという畑。石灰質が強く、シャブリよろしくの白い土。その次の赤ワインは、シャン-マルタンの西隣の畑であるレ・コンバン。ここの畑の土は、「石灰+ベージュ泥灰質で、味わいに複雑味とフィネスを帯びる」といわれているが、実際の色はベージュというより青みがかったグレーといった風情。次の赤ワインはカイヨットというモノポールの畑でコンバンの西隣。ここは軽めの粘度+石灰質で赤みがかった石灰だ。オリティックという化石の影響らしい。これらがワインの味を決める大きな要因になっていることはいうまでもない。
3つの畑をつなげてもせいぜい数百メートルという規模なのに、これだけのテロワール(土壌)の違いを見せ付けられるとは、まさに小宇宙。ここにブルゴーニュの縮図を見た気がした。