――「プレミアムオート」なるモードが搭載されましたが。
今村「当社には、過去から蓄積してきた機能や画像解析の技術が数多くあります。が、これまでは分散的というか、『5倍ズーム』『1200万画素』『押すだけ夜景』『押すだけ逆光』『探してフォーカス』『人物メイクアップ』『風景メイクアップ」……といったふうに、それぞれの要素や機能がばらばらに存在していました。
多機能なのはいいけれど、これらをどうお客様に理解していただけるようにするか。とにかく"簡単に"キレイに撮れればいいのに、と考えるお客様は少なくないのではないのだろうか……。それは、私たちにとって、これまでの反省点だったんです。これをふまえ、各機能・要素を完全に連携、合体させて、全部入りのフルオート機能を作ったんです。それが、プレミアムオートです。
そこで問題になるのが、どんなとき、どの機能を使うかという解析技術です。認識された撮影条件から、どの部分にどの機能を使うかをカメラが複合的に考えて、自動的に実行、適用するのがプレミアムオートなんですね」
――エクシリムエンジン4.0にも、撮影条件を自動判定して、最適なパラメータ設定を適用してくれる「オートベストショット」がありましたね。あれとは違うのでしょうか?
今村「オートベストショットは、解析というよりは"シーン判定"です。風景か、夜景か、人物か、という判定がなされると、それに該当する画質設定が適用される仕組みですね。だから、夜景なら、"夜景"というくくりしかなく、条件が多少変わっても、適用される画質の設定は変わりません。対して、プレミアムオートは、撮影条件に最適なパラメータを細かく組み合わせて適用するので、"その瞬間だけのオリジナルのシーン"を瞬時に生成するようなものです。
乱暴な言い方をすると、オートベストショットのパラメータ設定の種類は、たった6種類しかありません。でも、プレミアムオートの場合は膨大すぎて数え切れない。先日、社内からプレミアムオートで発生するパラメータの組み合わせ数を出してくれと要望されたのですが……。撮影条件や被写体によってまったく変わってしまうので、結局計算できませんでした(笑)。
具体的に、写真を見ながらお話ししましょうか。このときカメラは、『顔があるぞ。でも、アップで撮ってないな。照度が高くて風景だな。青空があるぞ。緑もある。でも、どうも逆光っぽい。顔が暗く写ると困るから、フラッシュをオンにしよう。顔が小さいから、人物メイクアップは弱めでいいな。青空と緑も風景メイクアップで彩度を高めてキレイにしよう……』などと考えるわけです」
――でも、それでは夜景撮影の場合は大変なことになるのでは?
今村「仰る通りです。意外と知られていないことですが、フラッシュ光はオートホワイトバランスの大敵なんですよ。夜景と人物の組み合わせではフラッシュを発光させるのが当たり前ですが、フラッシュ光と電球色では、色温度がかけ離れている。ですから、どうしても被写体が他の光源の影響を受けてしまうんです。
そこで、今回、『インテリジェントカラー』という内部処理を作りました。主要被写体の周辺の色を残したまま、他の光源を領域判定して、ホワイトバランスを局所的に最適化する技術です。適用例もご覧ください。それぞれ色温度の異なる複数光源下でも、より本物に近い色が再現されています。このような夜景はもちろん、日中の風景でも太陽光の当たっている場所と木陰では色温度が異なるので、この処理が働きます」…つづきを読む