インターネットから生まれた物語、『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』の監督を務めたのは、『キサラギ』『守護天使』などを手がけた佐藤祐市監督である。本作を撮ることになった経緯や、監督自身がインターネットという場をどう捉えているかについて伺った。
――この作品を撮ろうと思ったのはなぜですか?
佐藤「タイトルが長かったからです!(笑) 去年の9月ぐらいにお話をいただいたんですが、原作本を渡されて、タイトルの『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』を見たときに「何これ!? やりたい!」って思いました。タイトルが長すぎるんじゃないかっていう話もあったみたいですけど、すごくキャッチーだからそのままでいいじゃんって」
――"ブラック会社"についてはどう思われましたか?
佐藤「ブラック会社って労働環境が劣悪な職場のことですよね。でも映画を撮りながら考えたのは、何が会社をブラックにしたりホワイトにしたりするのかというと、やっぱり"人"なんだなと。定時に始まって定時に終わる仕事でも、毎日繰り返すのは結構辛いものだと思うんです。映画の中で『何のために働いているんだ』という台詞があるんですが、結局は働くことの意味や意義を感じて、どんな風に自分が仕事にアプローチしていくのかが大切だなと思います」
――原作はインターネット発の物語です
佐藤「インターネットはそんなに深くは使わないけど、一日一時間ぐらいは絶対に開いてますね。感想サイトとかはあまり見ると傷つくことがあるので(笑)、あまり深追いはしないようにしていますけど。でも正直な声が届くので、今後自分が物を作っていく上での一つのデータとして参考にすることはあります」
――インターネットでは現在アマチュアが映像作品を発表することが増えてきました。クリエイター育成の場としてインターネットをどう捉えていますか?
佐藤「アマチュアの方が発表の場としてネットを利用することで、刺激を受けたりできるのは素晴らしいと思います。ただ問題は、それがまだビジネスとして成立するところまでいってないこと。権利をしっかりと管理して、そこでお金がちゃんと集まるんだよっていうことを誰かが示さないと、新しい才能は入ってこないんです。でも今後どうなるかは、わからないですね。作品をネットで発表していくということが、もっとムーブメントになって、ものすごいエネルギーを持つ時代がくるかもしれない。それで映像文化が盛り上がっていくなら、それは僕にとっても嬉しいことだし、そうなったら面白いなと思います」
撮影:石井健