――リーダーを演じてみていかがでしたか?
品川「ずっと『バカバカ』怒鳴っている役なので、その『バカ』が全部同じに聞こえないかとか、単調にならないかというのですごく悩みましたね。あとは新聞を投げて人にぶつけるっていう場面が何回かあるんですけど、4、5メートルの距離を本当に投げないといけなくて、監督が『ここに当たるといいんだけど』って無茶言うんですよ(笑)。それがすごく難しくて、決まったときには一仕事したなと(笑)」
――芸人の世界もブラック会社並に厳しいイメージがありますが
品川「うーん……でも無茶なことを言う人はいないし、楽しいし、あまりブラックって思うことはないですね。それに"ブラック"になるかどうかって、好きな仕事かそうでないかってことだと思うんです。映画の中での仕事も、好きなら働けるかもしれないけど、興味がなかったら即やめますしね」
――主人公は元ニートで、現在ニートは社会問題にもなっています
品川「僕はニートにも可能性はあるし、絶対悪ではないと考えているんです。だって芸人だって月に2、3万しか収入がなくて親に心配かけているやつもいて、それってほぼニートですよ。『俺はいつか売れるんだ』とか言ってますけどね。それは甘い考えといえばそうなんだけど、もし成功したら親とかも手のひら返しですから(笑)。「あんたはやると思ってた!」って。ニートだって部屋の中ですごいゲームとかプログラムを作っていて、それが世界で流行るかもしれないわけですからね」
――本作は主人公が成長し、変わっていく物語ですが、品川さんが「自分は変わったな」と感じたことはありますか?
品川「実は僕は自分が監督した『ドロップ』の前後で取材を受ける態度が変わったんです。こんなこと言うのも失礼かもしれませんが、僕は昔、取材が好きではなくて。というのも、インタビューで話した言葉って色々なフィルターを通して配信されていくわけで、同じ言葉でもニュアンスが伝わらなかったりして、それが嫌だなと思っていました。でも『ドロップ』でメディアの取材を受けたとき、役者さんがすごく丁寧だったのを見て、そうした方が絶対お互い気持ちよく仕事ができるってことに気づいたんです。もう37歳なんですけど、まだまだ子どもだったなと思うことはたくさんあるし、日々勉強だなって感じています。今後も佐藤監督が映画を撮られるときに僕に合う役があれば、ぜひ声をかけていただきたいですね」
撮影:石井健