-- IT部門において、FileMakerが基幹システムと親和性が高いという認識はどれぐらい浸透していますか?

グピール氏: 残念ながらその点ではまだこれからです。小規模ユーザーで利用するというイメージがまだまだ強い。世界のどこをみても、IT部門は保守的です。なかなか新たなツールには踏み出そうとはしないという点もある。

だだ、FileMakerがIT部門においても有効なツールであるという認識は着実に浸透し始めているという手応えはあります。これは、FileMaker 10になったから始まったというものではなく、FileMakerを設立した当初から開始したものです。ITアナリストやITマネージャーから求められた機能を常に検討し、搭載するといったことを繰り返してきました。

例えば、FileMaker 6ではXMLをサポートし、FileMaker 7ではエンジンを作り替えた。拡張性を向上させ、セキュリティ機能も向上させた。FileMaker 8ではPDFへの対応を図り、FileMaker 8.5ではWebビューワを搭載した。また、FileMaker 9ではスライスSQLのコネクションを入れ、サーバーに対するアドミニコンソールや、phpのサポートにまで広げた。

そして、FileMaker 10ではスクリプトトリガーを採用するといった大きな進化を遂げた。FileMaker 10の特徴が理解されることで、SMBを超えた利用が促進されているわけです。

ルケイツ氏: FileMaker 10で搭載したスクリプトトリガーは、エンドユーザーが直接目に見する機能ではありません。これを使うと、よりうまく動作できるというものです。ある不動産管理やリースなどを行う企業では、建設からキャピタルアセット、メンテナンスまで幅広い業務を行っており、数多くのワークフロー、プロセスが必要になる。これらをスクリプトトリガーで自動化することができる。また、クライアント側にはシトリックスを導入し、仮想化での展開も行っている。さらに、SaaSとしても提供できるような仕組みを用意している。このように、企業ユーザーの様々な要求に対応できるようにしています。

-- 一方で、グピール社長は、FileMaker 10の成功を判断する上で、新たなユーザーをどれだけ獲得したかがポイントになると言及していました。その成果はどうですか?

グピール氏: 新たなユーザーの獲得という点では明らかに成果が上がっています。まずは小規模で、将来の拡張性を見据えて導入するという新規ユーザーもいますし、いきなりボリュームライセンスで10~15ライセンスを購入するユーザーもいる。これは、企業において、正当なツールとして受け入れられている証だといえるでしょう。

FileMaker 10が展開している市場は、非常に競合性の高いマーケットです。Excelを使いたいという人にもFileMaker 10は入っていくことができるし、大規模なシステムという点では、Oracleと競合する場合もありうる。直接競合すると言われるのがAccessですが、これはMacには対応していません。つまりFileMaker 10には、わかりやすい、明確な競合があるというよりも、様々な領域で競合する会社があちこちにあるという状況です。

ですから、競合他社の製品にこの機能があるから、当社もその機能を入れるというのではなく、顧客のニーズを聞き、それぞれの分野で活用するために必要とされる機能を搭載するということに取り組んでいます。顧客からの厳しい要求や、デペロッパーの声にも耳を傾け、さらに、初心者の方々にも使いやすいものを提供していくことになる。このバランスを維持するのは簡単な課題ではないと考えています。

-- エンタープライズ領域に本格的に展開する上では、日本において、大手システムインテグレータを通じた販売網の強化も必要ではないでしょうか?

グピール氏: SIerとの関係強化には、積極的に取り組んでいくつもりです。特に日本においては、大手企業ユーザーに対してアプローチするには、当社が直接展開するよりもシステムインテグレータを通じて参入する方が得策であることを感じています。