-- FileMaker 10のどのような点が受け入れられていますか?
グピール氏: FileMakerの課題は、初めてデータベースを使う人にも使いやすい製品でありながら、同時に、5年~10年使用し続けている、より優れた機能を求めるパワ-ユーザーに対しても満足をもたらさなくてはならないという点です。ビギナーから中級、そして高度なユーザーニーズに対しても満足を提供する。平均的なユーザーであればダイナミックレポートの機能を使い、簡単にレポートが作れる。またエキスパートであれば、スクリプトトリガーに価値を見い出すことができ、優れたソリューションを開発できる。このバランスに対して、高い評価があります。
また、あらゆる業種で使われているという点も特徴です。問題を挙げるとすれば、スクリプトトリガーを導入し、ソリーションを完成させるまでもう少し時間がかかるという点でしょうか。新たな機能を導入すると、その活用が浸透するまで時間がかかる。これから加速度的に利用が広がるものと期待しています。
FileMakerは、Oracleでも、IBMでもない。また、家の中でレシピを管理するためのデータベースでもない。すばらしいグループウェアソリューションである。コネクションも提供し、スタンダードに準拠し、基幹系をはじめとする他のITシステムとの連携もうまくいっている。これがFileMaker 10の特徴だといえます。
ルケイツ氏: FileMaker 10は、IT部門が痛みを伴わない形で導入できるツールだといえます。従来のバージョンと比べても、同じファイルフォーマットを使用し、取り外した機能もない。そして、安定性が高く、パフォーマンスが高い。例えば来週、米国政府機関の関係者と、FileMakerを導入し、より効率的にデータベースを活用するためのミーティングを行います。大規模データベースとの連携を図りながら、ハイパフォーマンスを発揮できるような構成を考えています。
ただ、日本の大手エンタープライズユーザーはどうしても保守的な側面がある。新規のものを導入するには、多くの検証をしたいという声があり、FileMaker 10に関しても、そうした動きが出ています。
ユーザーへの”アウトソーシング”
-- FileMakerは初心者でも使いやすいということもあり、部門独自のシステム導入のツールとも位置づけられています。しかしその一方で、これが結果として全社ITを統括するIT部門の「敵」となりうる可能性もある。その点はどう捉えていますか?
グピール氏: まず明確にしておきたいのは、FileMakerは、IT部門の「敵」ではないという点です。むしろ、IT部門と良好な関係を築けるツールだと考えています。
IT部門にとってのトッププライオリティは、SAPやピープルソフト、Oracleなど基幹系システムを管理していくことにあります。インフラの標準を定義するのが得意であり、ネットワーク管理、エンタープライズアプリケーションの管理を主要な業務としている。しかしその一方で、IT予算が限られ、人員にも制限があり、エンドユーザーの要求に応えきれていないというのが実態です。また、自分たちで社内のITシステムのすべてをやるのは難しいと気がつき始めています。各ラインにおけるアプリケーションの面倒を見る余力がないというのが実態ではないでしょうか。
FileMakerは、企業の部門ごとに小さなITのグループを作り、現場の問題解決を支援するツールです。エンドユーザーサイドで求められているのは迅速性や柔軟性であり、長期間に渡って多くの投資を行いながら構築する基幹システムに求められる要件とは大きく異なります。むしろ、本来、IT部門がやらなくてはならないはずのユーザー現場のITシステムの構築を、ユーザーにアウトソーシングしているのと同じ(笑)、という言い方もできる。こうした動きが進むと、ITインフラの領域から、IT部門とのコラボレーションが自然と発生することになる。また、FileMaker 9からSQLとの接続を可能とし、基幹システムとの融合を実現した。これも、IT部門にとって大きな意味があるといえます。IT部門は、FileMakerが存在していることで、少しは肩の荷がおりているのではないでしょうか。