ふたたびJobs氏が登場し、「one more thing……」がスクリーンに映し出された。今回は「ビデオカメラ」である。YouTube人気を追い風に米国では、「Flip」のようなシンプルで"低価格"なビデオカメラの売れ行きが好調だ。ストレージが4GBのFlipの価格は149ドル。続いてスクリーンに「8GB=無料」というナゾのメッセージが現れた。iPod nano 8GBモデルは08年モデルと同じ価格で、ビデオカメラ機能が新たに追加された。つまり8GBのiPod nanoで、小型ビデオカメラが無料提供されるも同然というわけだ。
one more thing……がiPod nanoのビデオカメラ機能だったものの、同機能自体は今回のイベントを表現するようなポイントではない。今回のキーワードを挙げるとすれば「共有」と「iPhone OSプラットフォーム」だろう。
手軽に動画を撮影できるiPod nanoのビデオカメラ機能もオンラインでのビデオ共有を意識したものだ。ほかにもiTunes Storeでのおすすめ曲のFacebookやTwitterを通じた紹介、ホームシェアリングなど様々なところに共有機能が組み込まれている。リコメンデーション技術Geniusも、その1つといえるだろう。これまでにGeniusには2,700万ユーザーから音楽ライブラリ・データが提供されたという。1ライブラリあたり約2,000曲、合計で540億曲分のライブラリデータが分析された。こうした集合知の活用が今回、自動ミックス作成やアプリのおすすめなどに拡げられた。音楽や映画、写真やビデオなどは1人よりも、大勢で意見を言い合ったり、友だちに自慢したり、または貸し借りしてこそ楽しめる。Appleの共有機能は、そうした利用体験を狙ったものである。
タブレット、カメラ付きiPod touch、ビートルズ作品のiTunes Store登場など様々な噂が噂で終わってしまった今回のスペシャルイベント。しかし最後は「また、近いうちに会いましょう」という、おやっと思うようなあいさつで終了 |
iPod touch 8GBモデルの199ドルへの値下げは、iPhone OSをより幅広い消費者層に浸透させる。iPhone/ iPod touchアプリのユーザーベースが拡大すれば、iPhone OSプラットフォームに投資する開発者が増加する。魅力的なアプリが増えれば、さらに新しいユーザーを開拓するきっかけになる。Schiller氏によると、今もiPod購入者の50%以上がiPodが初めての消費者だという。これは音楽からビデオへと市場を拡げてきた結果であり、今後はAppleが「ポケットコンピュータである」「優れたポータブルゲームプレイヤー」とするiPod touchがiPod市場の拡大を担うことになる。