マカオの街歩きの拠点となるのは、世界遺産が点在するセナド広場である。現地の広東語では、議事亭前地(イーシンテンチンテイ)となるが、広場に噴水があることから「噴水池(バンソイチー)」と呼ばれており、タクシーでもこの方が通じるようだ。新馬路(サンマ-ロウ)と呼ばれるメインストリートでタクシーを降りる。

まずは、民政総署に立ち寄った。ここも世界遺産である。1784年に建設された、ポルトガルの植民統治の中心であるこの建物は、白亜の外観も印象的だが、何よりも見どころは内部や中庭の壁に施されたアズレージョだ。アズレージョは、アラビア語で「磨かれた小石」を意味する言葉が起源となっている、ポルトガルの伝統的な絵柄タイル。街のいたるところでアズレージョは目にすることができ、独特な雰囲気をかもし出している。

民政総署の建物。前の通りが新馬路で、その手前にセナド広場がある

民政総署の内部には、随所にアズレージョが施されている。湿気を含んだ暑さを忘れさせる爽やかさが感じられる

セナド広場にはもうひとつ世界遺産がある。18世紀後半に建てられた仁慈堂で、マカオの初代司教が創設したアジア最古の慈善福祉団体の事務所として利用されていた。民政総署とは異なり、外壁の装飾が特徴的だ。内部には17、18世紀の陶器や芸術品などが展示されている。

セナド広場。左手の白い建物は仁慈堂大樓、奥には民政総署が建っている

独特の石畳は、カルサーダスと呼ばれる。ポルトガル職人がてがけたものだ

セナド広場の先にはアーケードが続いていて、ファストフード店やショップなどが並んでいる。植民地時代と現代が不思議と融合したかのような通りである。石畳の模様も波を表しているかのように感じてくる。すぐ先、左手に、聖ドミニコ教会が顔を出した。これも世界遺産。クリーム色の壁のためか、どこかやわらかな雰囲気で、濃い緑の窓の扉が一枚の絵画のように教会の姿を引き立てている。バロック様式のファサードとのことだが、何よりもあたたかみがにじみ出たような建物の佇まいに、ほっとひと息ついた。

印象的な佇まいの聖ドミニコ教会。繁華街の中に溶け込みつつ、存在感を際立たせている

イエズス会記念広場のオブジェから、聖ポール天主堂跡を眺める