シティ・オブ・ドリームズがある島は、もともと北部のタイパ島と南部のコロアネ島の二島からなっていた。これをつなげるために埋め立てられた場所が、シティ・オブ・ドリームズなど新スポットが建設されているコタイ地区というわけである。タイパ島は、かつてマカオ半島に住むポルトガル人たちの別荘地だった。
マカオの朝は……遅い!?
コタイ地区から20分ほど、シティ・オブ・ドリームズやベネチアンなどのリゾート建築を背にして通りを歩いて、ちょっとした丘を越えると、石畳の狭い路地と古い家並みが突然現れた。ごく自然に軽くタイムスリップしたような感覚にとらわれる。
目指したのは、かつて漁村だったというタイパ村。現在は、官也街(クンヤァガイ)と呼ばれる長さ150mほどの通りが、レストランのひしめき合う観光エリアだとガイドブックに書かれていたので、朝7時過ぎにハードロック・ホテルを出て、歩いてきたのだった。
背後にはにぎやかなコタイのリゾート地、前方にはタイパ中心部の高層ビル群が天を衝き、その間にひっそりと、昔のままの古びた街並みが、小ぢんまりと広がっている。その不思議な風情はここならでは。そんな思いを抱きながら官也街に到着、したのだが……。すべて店が閉まっていた。中国などの街をいくつか訪ねた経験上、朝から屋台が出ていたり、食堂で朝食を食べている人がいたり、にぎやかな風景を思い描いてきたので、まったくの予想外だった。
「マカオの人、朝、遅いです。仕事も、遅いです。のんびりしてる」香港人の日本語ガイドのお姉さんが、後でそう酷評気味に話してくれた。ポルトガルのシエスタ文化のせいか、わずか70kmほどしか離れていない香港人とマカオ人の気質は、かなり違うらしい。いずれにしても、「マカオ人の朝は遅い」と筆者が感じたのはあながち外れてはいないようだ。