ライフラインとしての携帯電話

高橋氏は、米国市場参入へのきっかけについて「従来、当社の携帯電話事業は国内市場に専念してきたが、2003年くらいから第2の柱を築こうということになり、海外進出について検討しはじめた」と説明する。その後2年程検討を重ね、カシオの強みを活かせる市場として、米国市場への参入を決めたという。

米国向け第一弾「G'zOne TYPE-V」。国内向けの「G'zOne TYPE-R」をベースに開発された

Bluetooth機能を搭載した第二弾「G'zOne TYPE-S」。51.3かける×100mm×23mm・110gの小振りでスタイリッシュなデザインが特徴

CDMA2000 1x EV-DO Rev.A方式を採用した第三弾「G'zOne BOULDER」。PTT(プッシュ・ツー・トーク)機能を備えるなど高性能化を図りながら、小型・薄型化を両立

米国市場へ参入するにあたり高橋氏ら海外企画チームは、カシオの商品力を最もよく活用でき、米国でのニーズに対応する商品キーワードとして”タフネス”を掲げた。「国内でも同様だが、市場の求める潜在ニーズを的確に捉えることが重要になる」と高橋氏は語る。

タフネスにフォーカスするにあたり、さまざまな現地調査を行ったという。国土の広い米国では、地域によって気候はもちろん、人々の意識もそれぞれ異なっており、嗜好や需要も幅広くなる。調査した結果、「米国において携帯電話はライフラインとしての需要が高い」ことが明らかになったという。

日本には、いたるところにコンビニエンスストアや交番があるが、米国ではこうはいかない。国土の広い米国では、何らかの有事の際に(通信手段として)携帯電話が重要な役割を果たす。災害はもちろん、自動車で周囲に店舗も対向車もない郊外のハイウェイを走行中に故障した場合など、緊急時の連絡手段としてのニーズが非常に強いのだという。

「壊れない」ことが法人需要をひきつけた

米国進出第1号となる「G'zOne TYPE-V」は、JIS保護等級7相当の耐水性能とハードな使用に耐えうる耐衝撃性能を備えた「G'zOne TYPE-R」をベースにした耐水・耐衝撃端末が特徴だ。続いて投入された「G'zOne TYPE-S」「G'zOne BOULDER」いずれもG'zOneの名を冠した”タフネス”さがウリ。そして、米国ではそのタフネスが評価された。個人用途はもちろん、法人用途に強く、建築現場、交通機関の運転手などからの需要が目立っているという。また、タフネスさ以外でも受け入れられている。「騒がしいところでも聞き取りやすい通話品質とハードな使用に耐える堅牢性、それでいて使いやすいデザインが評価されている」(高橋氏)。

現在では法人向けが好調で、「ビジネス用途では、屋外で業務を行う建築系の職種などでの需要が多い」という。これらの職種のユーザーから求められるのは、"壊れない携帯電話"だ。高橋氏は「もともと米国の市場にも、タフさを売りにした製品はあったが、G'zOneのような水深1メートル防水機能(注)を持ったものはなかった。G'zOneの市場はあると感じていた」と振り返る。

 国内には、JIS(Japan Industrial Standard:日本工業規格)で定められた防水、防塵性能についての規格「JIS保護等級」がある。防水の場合、0~8の等級がある。水深1メートル防水は、7級相当の耐水性能で、たとえば、常温、真水、静止している状態の水を用い、深さ1mの水槽に、電話機本体を沈め、そのまま、約30分間水底に放置しておいても、本体内部には浸水せず、電話機としての性能を保つことが可能であるとされる。