実はプリンスの方がお荷物?
~エリカ様は魔法使い~
今作の『プリンス・オブ・ペルシャ』の最大の特徴は、このツンデレ・エリカ様が、冒険のキーマン(というかキーウーマン?)になっているという点だ。『プリンス・オブ・ペルシャ』といえば、「跳んで、跳ねて、戦って」のアクションが伝統的にゲーム性の醍醐味となってきたわけだが、この点は今作も変わらない。しかし、このアクションにエリカ様を活用していくことが新要素となっているのだ。
……ゲーム中、プリンスとエリカ様は、常にべったりで、妬ける間柄なのである。
基本的に行動の主導権はプレイヤーが操るプリンスにあって、プリンスの動きに合わせてエリカ様はうしろを健気に追ってくる。「男女2人連れのアクションゲーム」というと名作『ICO』(2001年、SCEJ)が思い出されるだろう。しかし、『ICO』の同伴出勤キャラ「ヨルダ」は守るべき存在という感じで頼りなく後を追ってくる感じだったが、本作のエリカ様は、プリンスのアクションを幇助してくれるほど逞しく、しかもプレイヤーは、エリカ様が付いてきているかをいちいち確認する必要はない。
本作の開発は、『アサシン クリード』を手がけたユービーアイソフトのモントリオール・スタジオが担当しており、開発チームは「時間の砂」シリーズの担当チームをコアメンバーにした新チームが行っているとのこと。そのためだろうか。プリンスのアクションは、「時間の砂」シリーズの『プリンス・オブ・ペルシャ』とよく似ており、ジャンプ、壁走りなどの基本操作系は同じだ。ジャンプボタンとレバー入力だけで簡単に格好いいアクションが自動発動できるあのシステムは、一新されたという今作でも確かに継承されている。
なお、本作のゲームエンジンはユービーアイソフトのヒット作『アサシン クリード』のために開発された「Anvil Engine」を採用している。プレイヤーが発動したアクションにうまく自動補正がかかる、あの独特の操作支援システムが効いてくるため、簡単に踏み外したり、落下したりすることがない。多少の操作タイミングのズレなども許容されるので、アクションゲームが苦手な人がプレイしてもOK。むしろ、逆に自分が上級アクションゲーマーになったのではないかと錯覚できるプレイ感覚がとても気持ちいい。
「時間の砂」シリーズに対してアクション面における新要素は2つある。1つはプリンスが左手に身に付けているガントレット(手甲)に起因する技で、「つかみ」ボタンを押すことで効果が発動する。地形アクション時に活用すると、壁を滑り降りたり、あるいは特定のオブジェクトに対して、ガントレットを引っかけて壁走りや天井を伝う距離を引き伸ばす効果が得られる。
2つ目はエリカ様の召喚技だ。エリカ様は普段はプリンスの後を追っているだけだが、この召喚ボタンを押すと、彼女がテレポートしてプリンスの前に現れ、その折々に必要な幇助アクションを自動的に行ってくれる。たとえばプリンス1人のジャンプ力では到達できない場所にも、ジャンプの頂点でエリカ様を召喚することで、エリカ様が空中で手を繋いでくれて二段ジャンプができる。
そう、エリカ様は、短距離テレポートが自在にできるので、地形移動中は、むしろプリンスのほうが"お荷物"な立場のだ……。