古くからのパソコンユーザーならば『プリンス・オブ・ペルシャ』といえばAPPLE II用を思い出すかもしれない。筆者と同世代の30代ならばPC-9801用やX68000用のリメイク版を思い出すことだろう。このペルシャの王子の物語は、21世紀になっても、今なお新作が続々とリリースされるほどの人気ぶりで、2008年12月19日にはXbox 360向けに、2009年1月22日にはプレイステーション 3向けに、またまた新作がリリースされた。

今回レビューを行う最新作『プリンス・オブ・ペルシャ』は、プレイステーション3/Xbox 360向けにリリースされた初めての『プリンス・オブ・ペルシャ』ということ以外に、最先端グラフィックス技術と幻想的なアート表現を融合した「新感覚ビジュアル」が注目されていた作品だ。はたして、どんな作品に仕上がっているのか。じっくりと見ていくことにしよう。


『プリンス・オブ・ペルシャ』って?
~世界観は継承するが今作は続編ではない完全新作!~

『プリンス・オブ・ペルシャ』は、もともと1989年に『ロードランナー』などで著名なブローダーバンド社から発売されたサイドビューのアクションゲームが起源となっている。アラビアのある国の悪代官が王女に自分との結婚か死を迫るが、地下牢に囚われていた王女の恋人のプリンスがこれを救いに向かう……という分かりやすい内容であった。

当時としてはあまりゲームの題材になることのなかったアラビアの世界観と意地悪でサディスティックな地形トラップが絶妙な味わいを醸しだし、当時のゲーマーをトリコにした。このオリジナル『プリンス・オブ・ペルシャ』のゲーム性をほぼそのままの形で再現したものがXbox 360のXbox Live Arcadeにて『プリンス・オブ・ペルシャ・クラシック』(800MSポイント)としてリリースされている。古いゲーマーならそちらも要チェックだ。なお、このサイドビューの『プリンス・オブ・ペルシャ』は正統な続編となる『2』(1994年)もリリースされ、こちらも人気を博した。

こちらがXbox Live Arcadeの『プリンス・オブ・ペルシャ・クラシック』

それから10年後、「プリンス・オブ・ペルシャ」10周年記念作品として、1999年、レッドオーブ・エンターテインメント社(ブローダーバンド社の別ブランド)が『プリンス・オブ・ペルシャ3D』として3Dグラフィックスに昇華させた新章をリリースする。しかし、残念なことに、この作品はあまり高い評価を得られず、残念ながら鳴かず飛ばずの結果に終わってしまう……。その後、2003年にユービーアイソフトが、アラビアの世界観に幻想世界の要素を盛り込んだ新しい「プリンス・オブ・ペルシャ」シリーズを3Dアクションゲームとしてリリースする。「時間の砂」と呼ばれる時間を逆行させることができる魔法の砂時計を巡るアドベンチャーは、チャレンジングなゲーム性とスタイリッシュなアクション性がウケて各国のさまざまなゲーム賞を獲得するほどの人気作となった。この新シリーズは「時間の砂」サーガとして『プリンス・オブ・ペルシャ ケンシノココロ』(2004年)、『プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂』(2005年)の計三作品が制作されている。

プリンス・オブ・ペルシャ ケンシノココロ

プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂

前三作の大ヒットを受けて、ユービーアイソフトはPS3/Xbox360/PC向けに「プリンス・オブ・ペルシャ」の企画をスタートさせるが、その際、ふたたびシリーズの仕切り直しを決断する。今作は、前作にも増してアラビアの世界観が薄まり、幻想世界の要素が強くなった。ユービーアイソフトは公式にこれまでの全作品との関連を否定しており、「千夜一夜物語がさまざまなお話から編纂されているのと同じで、今作も『プリンス・オブ・ペルシャ』という物語集のうちの1つとして捉えてほしい」というコメントを残している。

さて、今作の主人公もプリンスと呼ばれるが、とても王子に見えない小汚い風貌で、劇中の会話の節々に"墓荒らし"をしていたことを漏らしており、もしかすると「プリンス」というのは単なる固有名詞なのかも知れない。ハニカミ王子みたいなニックネームの可能性も否定できず……。今作も続編が制作されることが最初から宣言されており、主人公の出生の謎については追々明らかになっていくのだろう。

アクション性は前三部作から引き継ぐが、世界観は全く別物となっている今作の『プリンス・オブ・ペルシャ』


(次ページでは、ゲームの鍵を握る「ツンデレ・エリカ様」について)