ウィスラーではこのほか、スキージャンプやクロスカントリーの競技場となる「ウィスラー・オリンピック・パーク」と、ボブスレー、リュージュなどの会場となる「ウィスラー・スライディング・センター」を建設。どちらも極力周辺植栽の伐採を避け、生態系を乱さないよう再度植え直すなどの環境配慮がなされている。

「ウィスラー・オリンピック・パーク」のスキージャンプ台。カナダの若手選手たちが練習していた

ジャンプ台の上からの風景。ここからウィスラーの大自然の中に飛び出していく

「ウィスラー・スライディング・センター」ではリュージュの練習中。高低差152mという世界最高の傾斜を持ち、世界新などの記録が期待される

リュージュやボブスレーのコースを作るコンクリートの模型。横の穴からアンモニアを流して冷却する

ビレッジの店舗経営やスキー場の案内人、スキーインストラクターなど観光業を中心に小さなコミュニティが形成されているウィスラーでは、街の知名度を一気に上げる五輪への期待度は高い。元スキーパトロールであり、現在もボランティアで週1度のスキーパトロールをしているというウィスラー市長に話を聞いた。

ウィスラー市長のKen Milamed氏

「ウィスラーは偉大な山を有する北米最大のスキーリゾートであるとともに、夏のマウンテンバイクでも好評をいただいています。その魅力は、雄大な山々を有する大自然と、お客様を大切にするビレッジのホスピタリティです。このウィスラーの素晴らしさを世界中の方に伝えることができる機会を、街の人々はとても喜んでいます。開催までに様々な準備を整え、一人でも多くの方に、ウィスラーを満喫していただきたいと思っています」。

「ウィスラーはこの美しい自然を守るため、環境保全活動では常に世界をリードする存在でありたいと自負しています。五輪のために建設されるすべての施設はグリーン・ビルディングの基準を満たしており、周辺環境になるべく足跡を残さないよう細心の配慮をしています。また、それが実現できたのは、先住民の方々の全面協力があったからなのです」。

対外的にはあまり知られていないが、カナダには多様な先住民が存在する。先住民族のアートや文化を知ることができるカルチャーセンターも設立されている。先述のPeak2Peakのイベントでも先住民の歌が披露されるなど、これまであまり強調されてこなかった先住民との融合が前向きに取り組まれている。「私たちは五輪期間中の17日間のことではなく、その後の17年間のことを考えて行動しています。過去の五輪の中で最も高いサステナビリティを実現し、環境と社会に貢献する五輪の新たなベンチマークとなりたいと願っています」。

現地の人々の様々な思いのもと、着々と準備が進められるバンクーバー冬季五輪。1年後に迫る2010年の開催時には、ぜひ日本選手の活躍とともに、バンクーバー、ウィスターの賑わいやエコ大国・カナダならではの持続可能な五輪への取り組みにも注目したい。