カナダでは、ゴミの分別の徹底はもちろん、地産地消のオーガニック食材を選び、ジョギングやヨガで健康を気遣う、といったエコでクリーンな暮らしが一般市民に浸透している。そのため、五輪に向ける市民の目はシビアだ。ミーハーな話題性より、重視されているのが、「五輪が市民に何をもたらしてくれるか」という「五輪・レガシー」だ。施設でもコミュニティセンターのような既存の運動施設を改装するなど、五輪開催後、子どもたちや地域の人々のためのスポーツ施設としていかに活用できるかが第一に検討されている。とはいえ、開催を嫌っているわけではもちろんなく、開催中のサポートのためのボランティアは募集後すぐに満員になったほど。五輪のマスコットキャラクターやグッズも人気で、自分たちが誇る街で海外のゲストをもてなすことを楽しみにしている。

ショップのスタッフとマスコットキャラクター。奥左はシャチが部分的に熊に変身したという「海熊」がモデルの"ミガ"。隣は雪男がモデルの"クワッチ"。下左はサンダーバードの羽をもつ妖精がモデルの"スミ"

市内に設営された五輪のカウントダウンクロック。バンクーバー市民の五輪への期待感を感じさせる

従来の開催国では新設されていた五輪ショップも、バンクーバーでは老舗百貨店『ベイ』内に参入。カナダチームのユニフォームなどのグッズのほか、五輪マスコットが早くも人気だ。マスコットはカナダ西海岸の先住民の伝説上の動物をモチーフとした3匹の怪獣で、雪男の"クワッチ"、海熊の"ミガ"など、日本人にもウケそうなキュートさ……と思ったら、発表された当初はカナダでも「ポケモン」の仲間だと勘違いされていたそう。オレンジの帽子をかぶった"マックマック"は「正式なメンバーではないが、必要なときに現れる名誉メンバー」という位置づけの隠れキャラで、唯一、バンクーバー島に現存するマーモットがモデル。なかなかユニークで、開催時には人気のお土産となりそうだ。

(上)バンクーバーの象徴的存在であるスタンレーパーク。約400haの広大な敷地を持ち、市民の憩いの場となっている(右)イングリッシュベイに建てられたバンクーバー冬季五輪のエンブレム「イラナーク」。モチーフは、カナダ先住民・イヌイットの道しるべとなる石像「イヌクシュク」。イラナークは、イヌイットの言葉で"友人"の意味。イヌイットにとって石像は希望や友情、歓迎といった意味がある

バンクーバー市民に人気の「グランビルアイランド パブリックマーケット」にて。様々なオーガニック野菜や新鮮な海の幸が売られていた