――カラーデザインに時間をかけられるメリットを武器に、同社のデザインチームが次に挑戦している色はブルーだ。

初代EXILIMのデザイナーでもある井戸氏

井戸氏 淡いブルーはW21CAIIなどで使ったことがありますが、発色のいいビビッドなブルーは、いろいろ試行錯誤を続けている段階です。

菱山氏 日本のケータイはさまざまな色の機種が発売されていますし、ユーザーのニーズも多様化しています。ブルーに限らず、いろいろな色に挑戦していきたいと思いますが、どんな色にしても、それぞれの色域の中で一番きれいに見える色を、いちばん先に出したいですね。A5401CAのイエロービーがそうでしたが、最初に出したメーカーが"イエロービーといえばカシオ"というように評価されることになりますからね。

――他社メーカーからは蒸着技術によってメタル感を出す端末や、グラビア印刷技術により細かい模様を施す端末も発売されている。しかし、カシオのデザインチームは当面はカラー塗装を追求していく構えだ。

井戸氏 レザー風やアルミ風といった、フェイクでオモチャっぽいものは出したくないという思いはあります。似て非なるものでは質感は出せませんし、カシオとしては本物にこだわっていきたい。それを"カシオらしさ"として定着させていきたいです。

操作性とデザインを両立させるカシオケータイ

――カシオ製のケータイは、"使いやすさ"においてもユーザーから高い評価を得ている。EXILIMブランドを冠したW63CAは、デジタルカメラとしての"顔"を意識したデュアルフェイスデザインを採用しているが、ケータイとしての使い勝手も損なわれてはいない。

井戸氏 われわれの物づくりのスタンスとしては、奇をてらったものを作ろうとはしていません。本質を追究し、長く大事に使っていただけるものをデザインするという考え方です。かといって、どこにでもあるようなものは作りたくない。機能と見た目のかっこよさのバランスを図りつつ、オリジナリティも出すことを目指しています。

――カシオのデザインセンターでは4つのキーワードを指針にデザインを進めているという。そのキーワードとは「オリジナリティ」「エモーショナル」「コンセプチュアル」そして「エッセンシャル」だ。

井戸氏 オリジナリティは独自性、エモーショナルは情感や温かみ、コンセプチュアルはわれわれが考える思想であったり、お客さんに伝えたいメッセージ、そしてエッセンシャルは本質という意味ですが、ケータイにおいては使いやすさであったりします。この4つの要素をどのような比率で採り入れるかをデザインの最初の段階で決めます。

――W63CAはデジタルカメラEXILIMのコンセプトを継承するモデルであり、「コンセプチュアル」に重きが置かれている。ちなみに、井戸氏はEXILIMの初号機のデザイナーであり、薄型でスタイリッシュというEXILIMのコンセプトをケータイに受け継ぐこともスムーズに行えたという。

井戸氏 W63CAは、EXILIMケータイ W53CAの後継機にあたりますが、スペックを向上させただけでなく、デザイン面でも前モデルで実現できなかった部分をすべて見直しています。カメラまわりのデザインを改良し、前モデルで気になった電池ブタのラインを排除し、FeliCaマークも背面パネルに移動させました。若干ではありますが薄型化も図りました。

W53CAとW63CA。W63CAは、カメラまわりのデザインを改良し、前モデルで気になった電池ブタのラインを排除しており、よりカメラらしいルックスになっている。W53CAと比べて1.5mm薄型化を実現。縦幅は、画面サイズが大きくなったため、7mmほど長くなっている

――本物のカメラらしさを追求することは、ユーザーが撮影する写真にも反映するという。

井戸氏 人物を撮影する際、ケータイを向けられるのとカメラを向けられるのとでは、撮られる側の意識が変わります。カメラを向けると、撮られる人もいい表情になります。EXILIMケータイは、たとえば結婚式などでもデジタルカメラと同じ感覚で使っていただきたいですね。

今回は「色」に焦点を絞って取材したが、たとえどんな色であったとしても、EXILIMケータイ W63CAが機能と操作性においても、現行のカメラ付きケータイの最高峰であることもお忘れなく。

(村元正剛/ゴーズ)