――舞台で演じていくうえで映画と意識的に変えているところはありますか?
田中「演じるという点では同じなんですけど、舞台と映画ではお芝居のつくり方が全く違いますよね。例えば、自分がセリフをしゃべっていないときでも、お客さんに観られていたり。映画だったら撮られている間の数秒間、気持ちをぶつけていけばいいのですが、舞台ではずっと演じている役で立ち続けているので、それはすごくエネルギーを使うことなんだなと実感しています」
――ブログで、主演作『東京マリーゴールド』の故市川準監督も「きっと舞台を観てくれると思う」と書かれていましたが、父親的な存在だったという監督からの助言で今、演技に活かしていることはありますか?
田中「市川監督は『れならしくいろ。ざらざらでいいよ』と教えてくださった方。自分では気付いていない強さとか真面目なところとか (笑)、そんな"ざらざら"な部分が私の"自分らしさ"で、監督が私と出会ったときに好きになってくれた部分なんじゃないかなって思っています。だからこそ、『東京マリーゴールド』は、キレイに演じようとか正しく演じようと考えずに、自分の温度が入っている作品になっているので、私らしさが映っているのかもしれません。やっぱり本人自身の力や気持ちで、演じる役の説得力が変わってくるので、表面的なつくりものではなく、自分自身の心を強くもって感情にも敏感でありたいと思って今は演じていますね」
――つくりものではないという面では今回、作・演出を務める田村孝裕さんには「芝居に嘘のない役者」と絶賛されていますよね。
田中「舞台でどう演じていけるかは、私自身もすごく楽しみですね。ここで力をつけられるのかって。つけられたときには、また自分の知らなかった"自分らしさ"や眠っていた何かが出てくると思いますし(笑)」
「人は1日に200の嘘をつく」
――田村さんと、"英子"の役づくりについて話し合われたりもしましたか?
田中「最初に田村さんが『人間は普通に生活していても1日、1人200の嘘をついているんだよ』っておっしゃっていたんです。だから、『舞台でも、たくさん嘘をついてください』と。それが、今回のキーになっていますね」
――それは表情とか仕草とかの見せ方ということですか?
田中「舞台上で交わしている言葉以外の微妙な目線のやり取りなども大切にしよう、と。含んだものの言い方とか相手との気持ちの読み合いや空気感とかそういったところを出していければと思います」
――どんな"嘘"が用意されているのか楽しみですね。
田中「田村さんのおっしゃられていた"嘘"って本当にたくさんあると思うんです。家族の何気ないやりとりの中には『頑張ってね』や『応援しているよ』といった想いが直接的な言葉ではなく存在していて。そういった隠れた嘘というか、愛のある嘘を観客の方にも見つけていってもらえれば嬉しいなって思います」……続きを読む