Androidのプラットフォーム評価には長期的視点が必要

ざっと駆け足で初のAndroid携帯「T-Mobile G1」について追いかけてきたが、いかがだろうか。百聞は一見にしかずということで実際に触ってみるのが一番なのだが、日本でのリリース予定に言及されていないため、なんとも反応できないのが実情だろう。ある意味で、日本のユーザーにとっての一番のネックは端末が実際にどのタイミングで日本に投入されるかという点にある。OHAにはNTTドコモ、KDDI(au)といったベンダーが参加表明しているものの、本当にすぐにこれらキャリアから端末がリリースされるかは未知数だ。

また大手携帯メーカーがOHAに参加していない点も不安材料だ。最新機能をいち早く搭載した野心的なメーカーのHTCだが、得意分野がスマートフォンということもあり、市場シェアとしてはそれほど大きくない。そのほかにはSamsungやLGといった韓国の大手携帯メーカーが名を連ねており、特にLGは近い将来にAndroid端末をリリースする計画だと言われている。だが一方でNokiaやMotorolaといった大手メーカーがAndroidに積極的に乗り出す可能性は現時点で低く、前述のSamsungの動向も未知数だ。様子見のベンダーが多いことが、ユーザーに対しても様子見のスタンスをとらせる結果につながっているといえる。

次の課題はアプリケーションにある。Googleサービスを利用するのに必要十分なアプリケーションは揃っているものの、企業ユーザーが利用するにはExchange等へのコネクタが提供されていないこともあり、対応としてはまだまだ不十分の段階だ。これについてはT-Mobile側でも認めており、「Androidのターゲットはユーザー全体だが、こうした個々の要望にはサードパーティの参加に期待したい」とBrodman氏は説明する。どちらかといえばガジェット・マニアのようなプロシューマ層や、アーリーアダプターと呼ばれる"人柱"的な層が積極的に市場を開拓していくことになるだろう。

こうした点でみると、Androidは比較的長期の視点で市場開拓を計画しているのではないかと推察できる。直近の半年とかではなく、2年ないし3年以上のスパンで対応ハードウェアやアプリケーションを充実させ、段階的にシェアを開拓していく作戦だ。AppleのiPhoneが発売直後に販売数で爆発的な伸びを見せ、しかもSDKリリースを表明した段階でエンタープライズ攻略を表明していた点と異なる。あくまで市場シェアとサードパーティを段階的に増やしていくのがAndoroidなのかもしれない。またAndroidと直接競合する可能性が高いのがWindows MobileとSymbianだ。ともにユーザー層が似通っている部分があり、Androidが勢力を拡大したときに大きな脅威となる可能性がある。いずれにせよ、Androidに対して適切な評価を出すにはさらなる時間が必要となりそうだ。