オープンソースのオフィススイートであるOpenOffice.org(以下、OOo)の新バージョン3.0が、順調なら9月末か10月上旬にリリースされる予定だ。筆者は、OOo 3.0をオフィスにおける相互運用性の要に位置付けられることをテーマにしたリリースだと思っている。そんな観点からOOo 3.0を見ると、多くの新機能が1つの目的を目指しているのがよく分かる。

OOoのドキュメントフォーマットは、ISO(注1)認可の共通規格であるOpenDocument Format(ODF)を採用していることはよく知られている。ODFはXML技術を取り入れたドキュメントフォーマットであり、しかも仕様が公開されている。OOoだけでなく多くのアプリケーションがODFを扱え、結果的にオフィス内のドキュメントが相互に運用され、生産性が高まると期待されるのだ。OOo 3.0では、外部プログラムをうまく利用した「拡張機能」をインストールすることによって、WikiなどのWebコンテンツとシームレスにドキュメントを"パブリッシュ"することも可能になる。これもODFという共通の規格が採用されたおかげだ。「拡張機能」については、本稿の最後で詳しく紹介する。

一方、MicrosoftのOffice 2007で採用された、オフィスドキュメントの規格Office OpenXML(OOXML)も2008年4月に承認プロセスを経たので、いずれ共通規格としてISO認可となるだろう。いわゆる「ODF vs OOXML」が大きな話題となっているが、ODFとOOXMLは対立しているばかりではない。OOo最大のスポンサー企業であるSun Microsystemsは、Microsoftと2008年3月にSun/Microsoft Interoperability Centerを開設している。Interoperability とは「相互運用性」ということだ。

また、OOoのLinux版開発などに支援を行っているNovellも2007年9月に、Microsoftと共同でNovell Interoperability Labを立ち上げている(注2)。このような動きは、オフィス環境にサーバー、デスクトップを問わず多くのPCが導入され、しかも複数のOSが混在する状況を考えれば、当然の流れだ。その中で相互運用性を確保できるのが、ODF、OOXMLといった共通のドキュメント規格なのである。

OOo 3.0は、まずドキュメントフォーマットの相互運用性を高めるため、Microsoft Office 2007のドキュメント形式などの新しい規格に対応する。そこで本稿では、このドキュメントフォーマットの相互運用性について取り上げる。「OOo 3.0の新機能」以降では、OOoがMac OS Xに正式に対応したことなど、オフィスの相互運用性の要となる各新機能を中心に紹介していく。

なお、OOo 3.0の新機能は、2008年5月にリリースされた3.0ベータ、7月にリリースされた3.0ベータ2、9月7日にリリースされた初めてのリリース候補である3.0RC1で確認している。必ずしも3.0正式バージョンでの動作を保障するものではないので注意してほしい。

注1: ISO
国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称

注2: Novell Interoperability Labを立ち上げている
LinuxとWindowsの相互運用性」を参照。