感動のセミファイナルが終わり、いよいよ同大会のメインイベントだ。観客のお目当ては、もちろん"ミスターUFC"のチャック・リデル。このリデルという男は、UFCのライトヘビー級を4度も防衛したUFCはもちろん全米を代表する格闘家で、かつてはPRIDEに参戦したこともある。彼の登場シーンは、これまでの選手の登場シーンとは打って変わり、多彩なライトアップの演出が施され、その演出に感化されたのか、観客も立ちながら大声援で彼を迎え入れた。一方、エバンスに対して観客は終始ブーインを浴びせる。17戦無敗という彼の輝かしい戦績も、リデルの人気には隠れてしまうようだ。ラスベガスのブックメーカーもリデルには低配当(エバンスの3.4倍に対し、リデルは1.35倍!)を設定。UFC通の話によると、ラスベガスのブックメーカーは相当シビアで、リデルの絶対的優位は翻らないとも語っていた。

UFCのスター、チャック・リデル

いよいよ第1Rがスタート。スタンドからリデルがエバンスにパンチを放つ。だが、エバンスは「効いてない」というジェスチャーでリデルを挑発する。そんなエバンスに対し、リデルが終始プレッシャーをかける。リデルのパンチをもらって何度かふらつくエバンスだが、手数を出してリデルの攻撃を乗り切り第1Rが終了した。

そして運命の第2Rを迎える。第1R同様にリデルがエバンスを追い詰めるが、エバンスの左フェイクを挟んだカウンター気味の右ストレートがリデルの顔面をヒット。その一発でリデルがオクタゴンに沈み、会場を訪れた1万4,736人の観客が凍りつく……。エバンス衝撃のKO勝利。大波乱の末、同大会の幕が閉じた。

まさかの展開に会場は騒然となった

記者会見では「もしかしたら会場のみんなが動揺するかもね」と語っていたエバンス。その言葉が現実となった

凄まじい総合格闘技イベントだ。アトランタを訪れる前、何度かUFCの映像を見たのだが、初めて生でUFCを観戦し、想像を絶する凄味を感じずにはいられなかった。薄いグローブがいかに危険なのか、何度も流血するシーンを目の当たりにし、初めて理解できた。そして地味な柔術よりもパンチやキックなどの打撃をアメリカ人が望んでいることも体感。そうは言っても、グラウンドの攻防も捨てがたく、グラウンドでの激しい攻防は見ていて手に汗握る。そして、今回リデルが敗れたように、勝負には絶対がないということを、改めて思い知らされた。いくら有利に進めようとも、一発で形成を逆転できる面白さ。一瞬たりとも見逃せない緊張感がUFCにはある。残念ながらリデルは敗れたが、リデルとともにUFCを引っ張ってきたランディー・クートゥアの試合を今度は見てみたいものだ。

セミファイナルで勝利したリッチ・フランクリンが語っていた。「UFCは頭脳ゲームだ。それに加え、体力と精神力も要される複雑なスポーツだ」と。45歳という年齢ながらも、現在ヘビー級王者に君臨しているランディー。若い選手に負けない彼の経験と頭脳に裏打ちされた試合運びをこの目に焼き付けたい。

WOWOWでは、いよいよ10月からUFCの放送を再開する。19日(24:00~25:55)には『UFC -究極格闘技- UFC89 BISPING vs LEBEN』を、26日(24:20~26:20)には「UFC90」の『UFC -究極格闘技- UFC89 SILVA vs COTE』を放送。また、毎週月曜(22:00~23:00 ※9月29日まで)には「UFC IS BACK!」と題して過去の名勝負を放送していく。詳しい放送スケジュール等はこちらを参照。

(C)NAOKI FUKUDA