「家庭用NAS」などと呼ばれるLAN経由のアクセスに対応した外付けHDDが、ショップのPC周辺機器コーナーで売られるようになって久しい。Windows Home Serverは、まさにこの家庭用NASの市場をねらうものと言える。しかし、家庭用NASも急速に値下がりしており、容量1TB・ギガビットLAN対応の商品が店頭では4万円を切る価格で販売されている。これに対し、Windows Home Server搭載マシンはHDD容量の小さいエントリーモデルでも5万円台(6万円弱)。DSP版のOSは英語版発売時と同等とされていることから、2万円台半ばとみられる。

「OSだけで最低10万円程度するWindows Server 2003がPC本体とセットで数万円」と考えるとHome Serverの価格は破格とも言えるが、例えば、サーバー自体は無線LANをサポートしない(クライアントPCからは無線ルーターを経由して接続可)、クライアントPCの設定をリモートで変更する機能は含まれない、近年盛り上がりを見せているWindows MobileスマートフォンやiPhoneと同期することはできない(メールやスケジュール関連の機能は含まれておらず、Home Serverでは使用許諾契約上Exchange Serverなどの導入も行えない)など、"本物のエンスージアスト層"から見ると、自由度や「Windows Serverならでは」のマニアックな楽しみ方の部分でHome Serverなりの制限もあり、「家庭用NAS+α」の価格をどう見るかは評価の分かれるところだろう。

先進的な活用例として紹介された水槽管理サーバー

となると、Windows Home Serverの成功は、上級者以外の一般家庭や、先に挙げられた小規模オフィス、学校といった新市場を開拓できるかにかかっていると言える。製品発表会の最後には、既に英語版を利用しているユーザーから公募で寄せられた活用例として、Webカメラを数台接続して自宅の様子を外出先からチェックできる「ホームセキュリティサーバー」や、熱帯魚の水槽の温度をリアルタイムでWebページに表示する「水槽管理サーバー」としての利用法が紹介された。このように、ファイル保存専用のNASでは実現できないユニークな使い方も可能なことが、Windows Home Serverならではのメリットだとしている。実際にそこまでの「使い込み」をするかどうかはともかく、ゆくゆくはさまざまな機能を追加できる可能性に魅力を感じながら、まずはデジカメ画像や音楽データを整理するためのファイルサーバーとして使い始めてみる、というシナリオは確かに考えられる。

数年前、ブロードバンド接続の普及期に「自宅サーバー構築」が流行したことがあったが、当時はサーバーを立てること自体を目的とした、上級者のための楽しみというイメージが強かった。Windows Home Serverの登場で、果たして自宅サーバーの利用が初心者・中級者の層にも広がるのか、動向に注目したい。

ほか各社が発表した搭載機(参考出品含む)

クレバリー「SP8H」

サードウェーブ「Prime WIND」

九十九電機「eX.computer VB31」

デル「PowerEdge T105」

PDXジャパン「Pico Micro -G3」

ブレス「WST-1T」

ユニットコム「Xcute SLIM」

レイン「SilentServer-230」