『FABRICA』という連作舞台

『FABRICA』は今回の公演で3回目となる。これまでの2回の公演がエピソード的には10話と12話にあたり、今回はその2回の話を繋ぐ11話となる。

本広 : 「内容的には独立しているので、どの話から観ていただいても大丈夫なのですが、キャラクターを繋いでいこうという意図はあります。東京だと舞台ってもの凄い数の公演があって、みんな観に行く舞台を選べる状況じゃないですか。そうなると何かセールスポイントがないと。色々な劇団の面白い人を集めて、しかもキャラクターが前作と繋がっているという作りが少しは売りなるかなと思ってるんです。後は『この舞台は続けていきますからね』っていう意思を見せたかったんです。すると、観客も役者さんたちもそのキャラクターを愛しますよね。そうすると芝居の膨らませ方も変わってくるんですよね」

キャラクターを繋ぐことで、役者の意識も確実に変わると、本広監督は語る。

本広 : 「役者さんがキャラクター愛したら、もっと稽古しなきゃいけなくなるんです。そういう効果も今回のシリーズではありました」

今回の『FABRICA [11.0.1] LOST GARDEN』はどんな舞台となるのだろうか?

本広 : 「いつも何かしらテーマがあるんですけど、今度は舞台を作っている人たちの話になります。加えて、さらにそれを観ている人たちの物語があります。どこまでが舞台中の虚構の舞台で、どこからが現実なのか、考えれば考えるほど観ている側が混乱するようなことをやってみたいんです」

本来は今回の舞台の後日談にあたる『FABRICA [12.0.1] BABY BLUE 』。ここから、遡り『FABRICA [11.0.1] LOST GARDEN』の物語は生まれたと本広監督は語る。

本広 : 「『BABY BLUE』のラストがこのままハッピーエンディングというのも、あまりにも味気ないかなと……。『BABY BLUE』の後半で、最初は脚本になかった劇中劇的な要素を入れたら、俄然ふくらみが出て来たんです。そこからのアイディアで今回の『LOST GARDEN』に戻ったとき、より劇中の現実と虚構の境目をあいまいにした方向にいこうと思ったんです。ただ、物語自体は、3姉妹の舞台を題材にしたシンプルなものですから、初めて観る人も安心してください」

これからも本広監督の演劇プロジェクト『FABRICA』は続いていくのだろうか?

本広 : 「やるからには変化はさせつつ、続けていきたいですね。脚本の高井浩子さん(東京タンバリン)から受けた影響力も凄くて……。彼女は舞台だけで頑張って生きている人で、凄い刺激を受けてます。この3作の後も実現するのなら、『FABRICA[5.0.1]』とか、その辺にボーンと飛んでみたいですね」

本広監督は舞台の新しい形態にも興味を持っているようだ。

本広 : 「舞台というは、野外もあれば大劇場もあれば小劇場もある。舞台ってどこでやっても出来るもんだと思っていて、もしかしたら公園の真ん中で、いきなり芝居を始めるのも有り得ますよ(笑)。次は『劇場から飛び出そうかな』と思ってるんです。そう考えると、今、一番欲しいのがアトリエですね。それがあると、いつでもアトリエ公演というのが出来ますし、才能を求めてみんなその場所に集まるっていう……。これは凄い良いことだなと思って。そういう可能性を考えながら、とにかく映画とは違うものをやっていきたいなと思っています」