映画やテレビで大ヒットした『踊る大捜査線』シリーズなど、数々の人気作品を手がけてきた本広克行監督。今、本広監督は"舞台"という、彼にとって未知のジャンルに挑戦している。本広克行が演出を手がける連作舞台『FABRICA』の第2弾『FABRICA [12.0.1] BABY BLUE』が、遂にDVDでリリースされた。9月には第3弾『FABRICA[11.0.1]LOST GARDEN』の公演を控えているという本広監督が、あえて舞台という新たな世界に挑む理由を語ってくれた。
舞台への挑戦で監督としてさらなる成長を目指す
本広克行監督といえば、テレビドラマや映画の世界でヒット作品を連発し続ける男というイメージが強い。今年公開された『少林少女』(2008年)など、様々な人気作品に監督として関わる本広克行が、なぜ今、あえて舞台を手がけているのだろうか? かつて、本広監督は上京直後に映画よりも、舞台鑑賞にのめり込んだ時代があったという。
本広 : 「元々、舞台が凄く好きだったんです。初めて東京に出てきた時も、まず舞台を観ました。紀伊国屋ホールの一番奥の席の学生席みたいなのが凄く安かったんです。そこのチケットをゲットして第三舞台の芝居とかをよく観ていました。一番後ろから遠くの舞台を観ていたのに、いつも号泣できたんですよ。『こんな遠くから観ているのに泣ける。舞台っていうのは何なんだろう』と素直に思いました。『凄いエンターテイメントだな』って」
そんな若き日の感動が、本広監督を舞台へと向かわせたようだ。
本広 : 「僕にとって舞台は憧れのフィールドだったんです。でも、ちゃんとした舞台をやるのは無理かとも思っていました。昨年、映画を10本監督したところで、次のステップに自分が進むために、何かやらなきゃならないと思ったんです。それで、以前より興味のあった舞台の演出に挑戦することにしました」
ヒットメーカーとしての地位を確立している本広監督。彼は舞台に挑戦することによって、自身の演出力をさらに高めたいと強く感じていたという。
本広 : 「(テレビや映画における)僕の演出方法はまだまだ浅いと思っているんです。もっと僕に演出に関する優れたボキャブラリーがあれば、役者さんがもっと良い芝居ができるんじゃないかと思っていました。それを習得するには、舞台の演出をやるしかないと感じていたんです。舞台はずっと同じものを1ヶ月かけてリハーサルするわけじゃないですか。映像はその日の限られた少ない時間で作らなくてはいけない……。そう考えると、1ヶ月間毎日、舞台の演出をやっていると、なんか新しい発見があるんじゃないかと思ったんです」